11/23 幻の電車156号が復活!「ひろでんの日2020」開催

2020年11月23日、広島電鉄の路面電車開業記念日にあわせて、路面電車を「乗る」「撮る」「買う」「見る」といったさまざまな角度から楽しめるイベント『ひろでんの日2020』が初開催されました。第一回目となる今回は「レトロだョ、電車大集合」と題され、事前応募で当選した計100名のみで行われた千田車庫での撮影会には、「被爆電車」650形や他都市からの移籍車など10両のレトロ電車が集まりました。

新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった「路面電車まつり」(千田車庫で毎年6月開催)に代わる今回のイベントは、事前応募制となった撮影会・貸切ツアーのほか、広電西広島電停近くの広場「KOI PLACE(コイプレ)」にて同時並行で行われた中古部品販売、さらに遠方の参加できないファンのためにイベントの様子がライブ配信されるなど、これまでに無い新しいスタイルのイベントとなりました。

1 時空を超えた電車パレードで幕開け

市役所前~鷹野橋にて
前から100形101号、150形156号、650形653号。

市役所前~鷹野橋にて
大勢の観衆に見守られながら千田車庫へ向かう156号。

一番の目玉となったのは、広電の現存している車両では最古参を誇る “もう一つの被爆電車” 150形156号の33年ぶりとなる展示・復活運転です。150形は1925年に当時の広島瓦斯電軌が製造し、戦後に車体が新造され1971年まで活躍した電車で、引退後も保管されていた156号は1987年に一度復籍されましたが、それ以降は長らく江波車庫の片隅で眠り続けていました。

そんな幻の電車156号の復活自体が公表されていなかったサプライズでしたが、さらにはこの156号を保管されていた江波車庫から千田車庫へ回送する最中に、同じく原爆を経験した100形101号と650形653号が合流してのパレード走行というビッグサプライズが実施され、朝から沿線は大いに賑わいました。

先頭を走る「大正形電車」101号は、1912年(大正元年)に当時の広島電気軌道が製造した路面電車開業当時の車両を再現したレトロ電車です。1984年の広島県観光キャンペーンにあわせて150形の機器を流用して造られました。後ろを走る653号は、原爆投下から70年の節目となる2015年夏に被爆当時のカラーリングに復元され、RCC中国放送との共同企画「被爆電車特別運行プロジェクト」として貸切運行に使用されています。

2 希少価値の高い5形式による貸切ツアー

千田車庫での撮影会が終了すると、参加者は続いて、特に希少価値の高い5形式による貸切ツアー電車に乗車し、3つのコースに分かれて市内各方面へ向かいました。なお、撮影会と貸切ツアーは混雑を避けるため午前と午後の2回に分けて実施されました。

2.1 千田車庫→江波コース

紙屋町西~原爆ドーム前にて
本通~紙屋町西にて
紙屋町西~原爆ドーム前にて

千田車庫→江波コースには100形101号と200形238号が使用されました。

101号はかつて行われていた8号線(江波~横川駅)での営業運転が2018年9月末を持って終了したため、乗客を乗せての運行は約2年ぶりでした。238号は1989年に姉妹都市のハノーバー市から広島市へ寄贈された1928年製造の電車。こちらも営業運転は終了しているものの、毎年12月にはクリスマス電車としてイルミネーション装飾を施して運行されています。

2.2 千田車庫→広島駅コース

比治山橋~比治山下にて
比治山橋~比治山下にて

千田車庫→広島駅(比治山線経由)コースには570形582号と600形602号が使用されました。

582号は1971年に廃止となった神戸市交通局神戸市電から購入された1926年製造の電車。1960年に大規模な車体更新が行わているものの、製造年で比較すると現役の鉄道車両では日本最古とも言われています。602号は1975年の西鉄北九州市内線廃止に伴い1976年に西日本鉄道株式会社から購入された電車。先頭部を絞り込んだ独特な外観と、広電では珍しい赤系の塗装が特徴です。ファンの間では「フェラーリ」という愛称も。

2.3 千田車庫→横川駅コース

千田車庫→横川駅コースには650形653号が使用されました。

653号は前述の通り「被爆電車特別運行プロジェクト」に使用されていますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、乗客の募集は行わずに車内からLIVE配信を行う形での実施だったため、乗客を乗せての運行は久々となりました。

3 おわりに

胡町電停にて
イベント終了後、156号は車内からライブビューイングを行いながらの特別運転を実施。
千田車庫から紙屋町東・広島駅を経由して江波車庫へと戻りました。

今年は全国の鉄道会社でも車両基地の一般開放イベントは軒並み中止となり、来年以降もこれまでと同じように実施できるかは不透明な状況です。そんな中で、事前応募制や会場の分散など人が密集しにくい体制を整えてこのようなイベントを実施して下さったことに感謝しなければなりません。今回私は撮影会・貸切ツアーには参加せず外から電車を撮影しましたが、今後同じようなイベントが実施されることがあれば是非「中から」も楽しんでみたいものです。

出典・参考文献

脚注

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