JR東海 QRコードを用いたホーム可動柵開閉システムの実証試験を金山駅で実施

JR東海の東海道本線金山駅3番線では「QRコードを利用したホーム可動柵開閉システム」を導入することを目的とした実証試験が2020年11月28日より開始されました。なお、当記事に記載する内容は、試験開始前日の27日夕方に筆者が金山駅を訪問した際の取材結果に基づいています。試験開始当日の様子については記載していませんのでご了承ください。

1 QRコード式制御システムの概要

近年、低コストな方法で車両ドアとホームドアの開閉連動を可能とする様々な技術が実用化されている中で一際特殊なのが、東京都交通局とデンソーウェーブによって共同開発されたQRコードを用いた制御システムです。このシステムは、車両ドアのガラス部分に貼られた特殊なQRコードの「動き」と「内容」を地上側のカメラが読み取ることで、簡単・低コストに編成両数・ドア数の判別や開閉連動を行えます。

2020年11月18日、JR東海は2021年3月にホーム可動柵(以下:ホームドア)設置が予定されている東海道本線金山駅3番線で、QRコード式連動システムの導入に向けた実証試験を開始することを発表しました。この試験は、今後ホームドア整備が予定されている名古屋駅において同システムの導入を目的としたもので、降雨や太陽光の反射など様々な屋外環境におけるQR検知用カメラの検知機能を確認するとのことです。

なお、金山駅3番線では2018年1月31日からの約9ヶ月間にわたって大開口ホームドアの実証試験が行われていましたが、この時は開扉のみ自動[1]列車の定位置停止と編成両数をセンサで検知して自動開扉。で、閉扉は車掌がホームドアと車両ドアをそれぞれ操作していました。QRコード式システムの導入により、車掌はホームドアの閉扉操作を行う必要が無くなるため、ホーム監視業務などに注力できることがメリットとされています。

2 車両ドアへのQRコード貼付開始

都営浅草線系統などでおなじみのtQRが東海エリアにも出現

試験開始を控えた11月24日より、車両ドアへのQRコード貼付が順次開始されました。このQRコードは光の反射などに影響されにくい材質で50%欠損しても読み取れる新型QRコード「tQR®」というもので、もちろん一般的なデバイスで読み取れるものではありません。

「tQR」が貼付されているのは313系の一部編成のうち豊橋方から3両目の2番ドアです。金山駅での試験は3番線なので「tQR」が必要なのは現時点で海側のみのはずですが、既に海側・山側両方のドアに貼付されているため、今後の展開が比較的早期に進むのではないかと感じました。

3 駅に設置されたQRコード読み取りカメラユニット

QRコード読み取りカメラは、車両ドアのQRコード貼付位置に合わせて豊橋方から3両目の2番ドアの上方から吊り下げられていました。このカメラが車両ドア左右のQRコードが別々の方向に動くことを検知して、ホームドアを追従して開閉させることができるようになります。

取材した27日夕方時点では、実運用中の駅とは異なりカメラ本体のレンズ防滴カバーが取り付けられていない状態でしたが、翌日には取り付けられたようです。

4 編成両数の判別に関与しない?

金山駅東海道線ホームではホームドア設置工事が進行中
黄色い看板は運転士向けの停止位置マーカー
車両前面を測定して列車の定位置停止を検知するセンサ
車両の有無で編成両数を判別するセンサ

この試験が実施される金山駅自体も2021年にホームドアが設置される予定となっています。しかし発表された内容の限りだと、今回の試験はあくまでも名古屋駅での導入に向けたQRコード読み取り性能の確認のためとされており、来年設置されるホームドアがこのシステムによって運用されるのかは不明です。

3番線豊橋方の列車停止位置付近には定位置停止センサが、ホームの名古屋方となる6両目付近および8両目付近には両数検知センサがそれぞれ設置されていました。2018年のホームドア実証試験でもこの2種類のセンサによりホームドアの自動開扉が実現していたので、仮にQRコード式システムが金山駅で本格導入されたとしても、QRコードは編成両数の判別などには関与せず、閉扉連動だけのために使われるのかもしれません。

5 おわりに

現時点では試験ということで「tQR」の貼付も一部編成に留まっており、システムが本格導入された際にどのような運用方法になるかを考察するのは難しいようです。しかし金山駅の現状を踏まえると、QRコード式でありながらQRコードの車種情報は使わずにセンサで両数を検知するという仕組みになる可能性もありそうだと感じました。

出典・参考文献

脚注

References
1 列車の定位置停止と編成両数をセンサで検知して自動開扉。

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