11/06 JR東日本E261系「サフィール踊り子」東京方5両×2本が出場
2019年11月6日、JR東日本の新型車両E261系「サフィール踊り子」のうち、4~8号車となる東京方5両×2本が山口県下松市の日立製作所笠戸事業所を出場しました。
E261系「サフィール踊り子」は東京と伊豆を結ぶ観光特急列車で、251系「スーパービュー踊り子」に代わる新たなフラッグシップトレインとして2020年春のデビューを予定しています。グリーン車よりもさらに格上の「プレミアムグリーン車」や、麺料理を楽しむことができる「ヌードルバー」といった豪華な車内サービスが魅力的な車両です。
目次
1 編成
川崎重工業兵庫工場にて製造された「プレミアムグリーン車」を含む伊豆急下田方3両×2本も前日に出場しており、本日出場した東京方5両×2本と合わせて8両編成2本が組成され、編成番号はRS1・RS2編成となるようです。日立製造分5両の車両形式は、伊豆急下田方からサシE261+モロE261+モロE260+モロE261-200+クロE261となっていました。
(4号車)サシE261形
4号車のサシE261形「ヌードルバー」は、食堂車を意味するサシという形式が付けられました。海側には他の号車より1段高い側窓と天窓が並び相模湾の景色を一望できる造りとなっています。山側は大部分をキッチンが占めているため窓がほとんど無い特徴的な見た目です。
(5号車)モロE261形0番台
屋根上にパンタグラフを2基、床下に主制御装置・断流器などを搭載する電動車で、隣のモロE260形0番台とユニットを組んでいます。車内には車いす対応座席および大型トイレや多目的室を備えており、定員は編成中最も少ない14名です。
(6号車)モロE260形0番台
床下には主制御装置・蓄電池などを搭載する電動車で、隣のモロE261形0番台とユニットを組んでいます。定員は36名です。
(7号車)モロE261形200番台
他の車両とユニットを組まない電動車で、屋根上にパンタグラフを1基、床下に主制御装置・電動空気圧縮機などを搭載しています。定員は30名で、東京方車端部にトイレを備えています。
(8号車)クロE261形
東京方の先頭車で、屋根上に列車無線用アンテナ・WiMAX用アンテナを、床下に補助電源装置・統合型ATS車上装置(P型)・TASC(定位置停止装置)などを搭載しています。定員は24名です。
2 主要機器
2.1 主制御装置
E235系と同じく電動車1両ごとに主制御装置を搭載した独立M車方式となっており、日立製作所製のVVVFインバータが採用されています。外観は相模鉄道20000系や神戸市営地下鉄6000形に搭載されているハイブリッドSiC-VVVFに類似しています。
2.2 補助電源装置
補助電源装置の静止型インバータ(SIV)は、E235系量産先行車の一部でも採用されている東洋電機製造製SC106形だと思われます。
2.3 電動空気圧縮機
電動空気圧縮機(コンプレッサ)にはこちらもE235系と同じクノールブレムゼ製のオイルフリーレシプロ式が採用されています。
2.4 パンタグラフ
パンタグラフはE235系でも採用されている工進精工所製のPS33Hだと思われます。雪が積もりにくくするため枠組部分が丸いパイプになっているのが特徴です。パンタグラフ搭載部分は低屋根構造となっており、搭載車両の車番表記には中央本線の狭小トンネルに対応していることを示す◆マークが付けられています。
2.5 空調装置
天井が高い構造のため空調装置は屋根上ではなく床下に搭載されており、外観はE257系やE259系で採用されているAU302A形に酷似しています。
3 台車
台車はJR東日本の在来線電車で標準となっている軸梁式ボルスタレス台車で、日立製作所製のDT88(電動台車)・TR272(付随台車)を装着しています。乗り心地向上のため、ヨーダンパや軸ダンパに加えて全車両にフルアクティブサスペンションを装備しているそうです。
2018年5月にE261系の導入が発表された際、エクステリアデザインのイラストに描かれた台車形状がモノリンク式ボルスタ付台車のように見えたため、鉄道ファンの間では様々な憶測が飛び交いましたが、あれはあくまでも “イメージ図” だったということでした。
4 列車制御システム「INTEROS」
列車の運転に係るあらゆる指令を管理する制御伝送装置には、JR東日本の車両ではE235系に続いて2例目となる列車制御システム「INTEROS」が採用されています。しかし特筆すべき点は、これまで各社の車両に導入されてきたINTEROSは三菱電機製であったのに対し、E261系では日立製作所製が導入されていることです。
元々INTEROSは開発段階において、三菱がINTEROS-A(集中方式)、日立がINTEROS-C(自律分散方式)という異なったシステム方式を開発し、JR東日本の試験車MUE-Trainにそれぞれを搭載して試験が行われました。結果的には三菱の集中方式が採用に至り、日立は自律分散方式の基本構成を独自のシステム「Synaptra」として引き継いだのですが、今回こうして日立製INTEROSが再び登場するという思わぬ展開となりました。
5 TASC(定位置停止装置)
先頭車の統合型ATS車上装置(P型)とTASC(定位置停止装置)が一体の機器箱で搭載されています。JRの特急型車両としては初めてのTASC搭載だと思われますが、現段階で本設なのか準備工事なのかは不明です。
JR東日本は2032年度末までに首都圏の在来線全駅へホームドアを整備することを決定しています。列車はホームドア設置によって高い停止精度が求められることになるため、将来的には東海道線などの各線区にもTASCが導入される可能性が高いと考えられます。
6 おわりに
E261系のデビューによって、251系「スーパービュー踊り子」は引退する予定です。E261系は今回出場した2編成だけの製造ですが、4編成在籍している251系の運用をどのような形で置き換えるのかが注目されます。
出典・参考文献
- 伊豆エリアへ新たな観光特急列車を運行します – JR東日本
- 伊豆エリアの新たな観光特急列車の名称等の決定について
- 次世代車両制御システム(INTEROS)に対応した車両機器の開発 – JR東日本
- 日立評論 2014年9月号:次世代鉄道を支える車両システム技術