JR西日本のホームドア:ホームドアを開けさせない方法「回送用」停目などを考察
JR西日本が在来線各駅に導入しているホームドアや昇降式ホーム柵は、地上側のセンサで列車の定位置停止や編成両数などを検知するシステムによって制御されています。近年はこのような車両側の改造を必要としないホームドア制御システムの導入事例が急増しており、工期短縮やコスト削減に貢献しています。
しかし、JR西日本のシステムは列車の定位置停止を検知するとホームドアが自動的に開扉する方式のため、回送列車などが停車してもホームドアが開いてしまう問題が生じてしまいます。では、どのような方法で “ホームドアを開けさせない” ようにしているのでしょうか。その一例を紹介します。
目次
1 「回送用」停止位置目標
JR西日本在来線において最も多く採られている方法は、所定の定位置から少しずらした場所に「回送用」という停止位置目標を設け、車両前面を測定する「在線検知センサ」の検知範囲外に列車を止めることで自動開扉を防ぐというものです。ただし、この「回送用」停目は全てのホームドア設置駅にあるわけではなく、回送列車等でも原則として通過禁止扱いとなっている駅に設けられています。
2 梅小路京都西駅の「通過列車用」停止位置目標
2019年3月に開業したJR嵯峨野線梅小路京都西駅では、1番のりば(京都方面)に「回送用」ではなく「通過列車用」という停目が設けられました。同駅を通過する快速列車や特急列車が何らかの理由で停車しなければならない時のためということは名称からも分かりますが、なぜこの駅の1番のりばだけに設置されたのでしょうか。その理由は隣の京都駅構内の配線にあると推測します。
JR嵯峨野線の京都駅構内には数百mにわたって単線区間[1]厳密には駅構内のため単線扱いではない。があり、ダイヤ乱れ時には上り列車が京都駅への入線待ちで数珠繋ぎになることがあります。そのような場合に通過列車であっても梅小路京都西駅で一時停車ができるように「通過列車用」停目が設けられたのだと思われます。
3 JR総持寺駅の編成検知システム
2018年3月に開業したJR総持寺駅は4ドア車7両編成の普通列車のみが停車する駅ですが、緊急時には6両または8両編成の快速列車が停車できるように、8両分のホームが確保されています。しかし、3ドア車で運転される快速列車は4ドア車用のホームドアに対応できないため、ホームドアの自動開扉を防ぐ必要がありました。
そこで、2番のりば(京都方面)はホーム後方の「編成検知センサ」で両数を判別することにより自動開扉をするか否かの制御が行われています。一方、1番のりば(大阪方面)は在線検知センサが7両編成だけを検知するように両数ごとの停止位置が分けられました。JR西日本で自動開扉を防ぐためだけに編成検知システムを導入しているのはJR総持寺駅のみだと思われます。
4 おわりに
当記事で紹介した「回送用」「通過列車用」以外にも「特急用」という停目が高槻駅に設けられているのですが、こちらは設置理由などを十分に考察しきれていないため今回は保留としました。また、今後ホームドア設置駅がさらに増加すれば新たな特殊事例が生まれる可能性もあるので、その際には高槻駅の事例も含めて第2弾として紹介できればと思っています。
出典・参考文献
- 坂上 英輝、中谷 誠「JR総持寺駅ホーム柵設置に向けた取り組み」『R&M : Rolling stock & machinery』2019.1、日本鉄道車両機械技術協会、p27-30
脚注
↑1 | 厳密には駅構内のため単線扱いではない。 |
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