広島電鉄 JTRAMシリーズの屋根上機器を比較

上:5200形
左下:5100形 右下:1000形

近畿車輛・三菱重工業(現:三菱重工エンジニアリング)・東洋電機製造の3社が共同開発した独立車輪方式の100%超低床路面電車は「JTRAM」と呼ばれており、2005年に広島電鉄の5連接大型車両5100形「グリーンムーバーマックス」として初めて実用化され、2013年には3連接型として全長を縮めた1000形「グリーンムーバーレックス」が、そして2019年3月にはシリーズ最新型の5200形「グリーンムーバーエイペックス」がデビューしました。

このような超低床電車は主要機器を屋根上に搭載しているため観察が難しいのですが、先日行われた路面電車まつり後の返却回送にて、なかなか捉えられずにいた5200形の屋根上をようやく撮影することができたので、シリーズごとに屋根上機器はどう変遷してきたのかを比較してみました。

1 5100形「グリーンムーバーマックス」

A車・B車
C車・D車
E車

A車・B車の屋根上には、VVVFインバータ装置・フィルタリアクトル装置・ブレーキ抵抗器といった主回路システムの機器が搭載され、それぞれの車体の主電動機2台を駆動します。5100形のVVVFは1台の制御器で1台のモーターを制御する1C1M2群構成で、パワーユニット及びフィルタリアクトルを強制風冷方式とし、主スイッチ類・引き通し線なども装置内に集約するなどして小型軽量化が図られています。

台車のないC車・D車は、車体中央に空調装置が、先頭車体側にパンタグラフが搭載されています。パンタグラフはかなり車端に寄っており、折りたたむと連接部にまではみ出すような状態となります。E車の屋根上には補助電源装置(SIV)が搭載されています。SIVの方式はIGBT素子を使用した静止型2レベルインバータです。

2 1000形「グリーンムーバーレックス」

先頭車体
中間車体

大型車両が入線できない路線での運行を目的に導入された1000形は、5100形の基本構造そのままに5連接から3連接に縮めるべく、機器のさらなる小型化に重点が置かれています。

VVVFインバータは5100形の1C1M2群制御から1M2C制御となり、1つの装置内にまとめられていたフィルタリアクトルや主スイッチ類などの機器箱が分割されました。中間車体には前位側に補助電源装置(SIV)、中央にパンタグラフ、後位側に空調装置が搭載されています。SIVは回路方式を高周波絶縁型コンバータ方式と2レベルインバータ方式の併用としたことで、内蔵する変圧器の小型軽量化が実現されました。

3 5200形「グリーンムーバーエイペックス」

A車・B車
C車・D車
E車

宮島線向けに久しぶりの5連接型として登場した5200形です。1000形と極力共通化が図られており、A車・B車は容量増加のためかフィルタリアクトルが大型化した以外に違いはなさそうです。

C車・D車は、5100形と比較するとパンタグラフが車体中央側に寄せられたのが分かります。E車の補助電源装置は容量増加のためか1000形のものよりも大型になっています。また、5100形では引き通し線のつなぎ箱が一体化されていたのに対し、5200形ではそれぞれ別の箱に分かれました。

話は逸れますが、一旦は見送りとなった駅前大橋線の架線レス計画がもし実現していたとしたら、一体どのスペースに蓄電池システムを搭載することになっていたのでしょうか・・・

4 おわりに

去年の夏頃に5200形の噂が出始めた時は、開発から15年近く経つのでそろそろ大幅な改良やイメージチェンジもあるのかなと思っていたのですが、車体や内装のカラーリングこそ大きく変われど基本構造はほぼそのままで、屋根上機器についても抜本的な変更はされなかったようです。それだけ元の完成度が高いということでしょうか。

出典・参考文献

脚注

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