京急電鉄のホームドア:なぜ遅れて開く?

京浜急行電鉄のホームドアは、車両ドアのガラス部分に貼付されているQRコードの「動き」と「内容」を地上側のカメラが読み取ることで、編成両数やドア数が異なる車種でも特別な操作無しで開閉連動が可能になるQRコードを用いた制御システムが使用されてます。システムの概要は別記事で紹介しています。

近年はQRコード式以外にも車両側の改修を必要としないホームドア制御システムが増加していますが、一般的に列車が定位置に停止したことを検知すればホームドアはすぐに自動開扉します。しかし京急では、車両ドアが開き始めたことをQRコードの動きで検知してからホームドアが開きます。そのタイムラグは僅かなので乗り降りに大きな支障はありませんが、なぜ列車が停止後すぐに自動開扉しないのかを考察してみます。

1 非営業列車で自動開扉させないため?

「列車が定位置に停止した」という条件だけでホームドアを自動開扉させてしまうと、回送列車や試運転列車であっても問答無用で開いてしまうため、それを防ぐ目的でこのようなシステムにしたのだはと考えました。

このような非営業列車での自動開扉を防ぐため、列車選別装置などと連動することで列車種別を判別している事業者もあれば、JR西日本在来線の一部駅のように、あえて本来の停止位置から数mずらしたところに回送列車用の停止位置目標を設ける方法もあります。

2 最終的な開扉判断を車掌に委ねるため?

ホームドア設置前の横浜駅1番線
ホームドア設置後の羽田空港第1・第2ターミナル駅

1枚目の写真はホームドア設置前の横浜駅1番線で撮影したものです。各編成両数の最後尾付近にはホーム床面に停止位置限界線が記されており、後部乗務員扉がこの線を越えた場合はオーバーランと判断して運転士に停止位置修正を要請します。

2枚目の写真はホームドア設置後の羽田空港第1・第2ターミナル駅です。停止位置限界線の表記方法が変更されており、車掌は乗務員室から一番近い乗降ドアがこの赤枠の中に収まっているか否かで停止位置を判断しているようです。

しかし、相互直通運転で様々な事業者の車両が乗り入れている京急線では、車種によってドア同士の間隔がバラバラです。例えば同じ京急車の1500形と600形でも、この乗務員室直近のドア位置は40cm近く差があります。このことから、同じずれ量でも車種によって赤枠の範囲内に収まるかどうかは異なり、システムによる停止位置検知だけでは判断が難しいため、最終的な開扉判断は車掌の目視に委ねるのではないかと考えました。

3 編成両数の判別が不可能な場合もあるため?

京急線内では、4両を2本連結して8両編成にしたり、8両と4両を連結して12両編成にした列車が多数運行されています。しかしこのような場合では、QRコードに格納された両数情報と実際の編成両数は必然的に異なってしまうため、「QRコードそのものの有無」でその場所に車両が存在するかを認識することで正しい両数を判別しているのだと思われます。

しかし上図のように、例えば4+4両の8両編成が何らかの理由で4両編成の停止位置に停止した場合には、その列車が4両単独なのか4+4両なのかの判別ができないため、列車が定位置停止後すぐに自動開扉するシステムだと4両分だけのホームドアが開いてしまう可能性が考えられます。

そこで、車掌が停止位置を判断して車両ドアを開けることをホームドア開扉のトリガーとする方式を採ったのではないかと推測しました。他社の非連携式ホームドアのように複数のセンサで編成両数を判別する方法もありますが、それだとせっかくQRコードに車種情報を格納している意味が薄れてしまいます。

4 おわりに

私自身は説3が一番根本的な理由だと思っているのですが、そもそも京急は「QRコードを用いたホームドア制御システムを採用した」と正式には公表しておらず、具体的なシステムの仕組みも今のところ明かされていないので、真相はまだ分からないままです。

QRコード式制御システムは後に都営地下鉄浅草線・神戸市営地下鉄西神・山手線(三宮駅)・小田急電鉄(登戸駅)でも導入されましたが、事業者によってもホームドアが先に開くか遅れて開くかは異なっているため、この研究テーマはさらに混沌を極めました。

出典・参考文献

  • 岡本 誠司、久保 実、小林 稔、岡本 知也「ホームドア開閉制御技術の考案 ーQRコードを用いた車両ドアとの開閉連動ー」『Cybernetics : quarterly report』Vol.22-No.4、日本鉄道技術協会、2017年、p10-15

脚注

コメントする