小田急電鉄のホームドア:代々木八幡駅のタイプ

タイプ 腰高式
メーカー 京三製作所
開閉方式 開扉 1番ホーム 自動(定位置停止検知・両数検知)
2番ホーム 車掌手動操作
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±350mm(TASCあり)
開口部幅 1・4番ドア 2,480mm
2・3番ドア 2,300mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

小田急電鉄の代々木八幡駅では、2019年3月16日のダイヤ改正とあわせて新ホームおよび橋上駅舎の使用が開始されました。新ホームには2012年度の新宿駅4・5番ホームに次いで同社2番目となるホームドアが設置されたほか、一部箇所には車両とホームの隙間を縮小する「可動ステップ」も同社で初めて設置されています。

1 新ホームについて

新ホーム使用開始直後の2019年4月撮影
反対側にあるのが旧ホーム
2023年6月3日撮影
新ホームは旧ホームに比べて幅員も広くなった

代々木八幡駅は各駅停車のみが停車する駅で、かつての相対式ホームは駅の両側に踏切があるため8両編成までしか停車できず、これによって新宿駅発着の各駅停車は10両編成での運行が不可能でした。この制約を解消するため、まずは踏切の移設によってホーム延伸スペースを確保し、従来ホームに代わる10両編成対応の島式ホームが建設されました。

その一方で、同駅は小田急線内で最も急カーブ上に位置しており[1]上り線は半径203m、下り線は半径207m。、車両とホームの隙間が非常に大きいという物理的問題は残り続けるため、ホームドアおよび同社初の可動ステップを設置することによって安全性が大幅に向上しています。

2 ホームドアの仕様

新宿駅4・5番ホームのメーカーは三菱電機でしたが、同駅は京三製作所の製品が採用されました。

TASC(定位置停止支援装置)を導入したことに加えて、同駅は急カーブで進入速度が遅いことから停止精度を±350mmまで狭めることができたそうで、これにより新宿駅4・5番ホームのタイプに比べて開口幅がかなり狭くなりました。ドア幅を通常の1,300mmから1,600mmに広げた「ワイドドア車」や車種によるドア位置の違いを考慮し、各号車2・3番ドアが2,300mm、1・4番ドアは2,480mmとなっています。

ホーム側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体(手前)と車両ドア間の筐体(奥)
1番ホームの非常脱出ドアは幅が狭い
2番ホームの非常脱出ドアは幅が広い

車両連結部の筐体には開き戸式の非常脱出ドアが設けられています[2]車掌用操作盤または駅係員操作盤が設置されている箇所を除く。。急カーブにおける車両連結部間隔の変化をこの部分で調整するため、カーブ内側となる下り1番ホームは幅が狭く、カーブ外側となる上り2番ホームは幅が広くなっているのが特徴的です。

戸袋スペース確保のため扉は互い違いに収納される
2番ホームの各号車2・3番ドアに可動ステップが設置されており、列車とホームの隙間を縮小する

各開口部の線路側には、3D式の支障物検知センサと非常開ボタンが1か所ずつ設けられています。

可動ステップは車両とホームの隙間が特に大きくなる上り2番ホームの各号車2・3番ドアに設置されており、張出量は200mmです。なお、1番ホーム側も含めて可動ステップが無い開口部には櫛状ゴムが設置されています。

3 ホームドアの開閉方式

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉(1番ホーム):自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 開扉(2番ホーム):車掌手動操作
  • 閉扉:車掌手動操作

下り1番ホームは各種センサが列車の定位置停止および編成両数を検知することで自動開扉します。その一方で、上り2番ホームも各種センサによる検知は行うものの、列車走行中に可動ステップが誤動作する危険性を考慮し、開扉自体は車掌による手動操作とされました。2019年3月6日のシブヤ経済新聞の記事には “将来的には全て自動化する” と書かれていましたが、設置から4年以上が経った現時点でも変更されていません。

定位置停止・両数判定システムの詳細については別記事にまとめています。

2番ホームの乗務員操作盤
列車到着時には「ホーム柵を先に開けてください」という音声が流れる

列車走行中はもちろん、旅客の乗降中に可動ステップが動作することも危険なため、開扉時は可動ステップ張出→ホームドア開動作開始、閉扉時はホームドア閉動作終了→可動ステップ格納の順で動作します。また、小田急の運転保安システム「D-ATS-P」のレールを通じた車両側への信号伝送機能を応用して、以下のような安全機能が備わっています。

  • 可動ステップが完全に張り出すまでは車両ドアを開扉できない[3]ホーム以外での誤開扉を防止する機能を応用。
  • 可動ステップ張出中は常用最大ブレーキを動作させる[4]運転台表示灯には「踏切防護」と表示されていたことから、踏切非常ボタンが押された場合にブレーキを掛ける機能の応用と思われる。
  • 列車不在時に可動ステップが張り出した場合に非常ブレーキ信号を伝送する
状態表示灯の表示推移

運転士向け・車掌向けそれぞれに乗務員表示灯が設けられており、表示内容は東京メトロなどで使われているものと概ね同じですが、2番ホーム側のみ可動ステップの張出を示す「S」および可動ステップの故障を示す「S故障」が追加されています。

上下2段構造となっている2番ホームの列車停止検知センサ
各種センサ配置図

列車の定位置検知や編成両数を検知するセンサの配置を見ると、2番ホームは1番ホームの倍の数が設置されていました。可動ステップの誤動作を防ぐために万全の対策を施していることが分かります。

4 おわりに

小田急のホームドア整備は同駅を皮切りとして本格的にスタートし、2020年度末までに代々木上原駅や下北沢駅など5駅で整備が完了しました。これら5駅のホームドアは、開口幅の広さや戸袋スライド式非常脱出口を設けている点など、代々木八幡駅とは随所の仕様が異なっています。

出典・参考文献

脚注

References
1 上り線は半径203m、下り線は半径207m。
2 車掌用操作盤または駅係員操作盤が設置されている箇所を除く。
3 ホーム以外での誤開扉を防止する機能を応用。
4 運転台表示灯には「踏切防護」と表示されていたことから、踏切非常ボタンが押された場合にブレーキを掛ける機能の応用と思われる。

コメントする