京阪電気鉄道のホームドア:京橋駅1・2番線

京阪電気鉄道で最多の乗降人員を誇る京橋駅では、三条・出町柳方面の1・2番線ホームに同社初となる可動式ホーム柵(以下:ホームドア)が設置されています。当初は2020年度中に同駅の一部箇所で試行整備される予定でしたが、計画変更により試行段階を踏まず2021年度に本整備となりました。

各ホームの稼働開始日は以下の通りです。

  • 1番線:2022年1月30日
  • 2番線:2022年2月20日

ホームドア導入を前に、1970年代に製造された5扉車の5000系はホームドアに対応できないことから、車両更新計画の前倒しで標準的な3ドア車に置き換えられました。それでもなお車種によってはドア位置が多少異なるため、二重引き戸式の大開口ホームドアが採用されています。

1 ホームドアの概要

タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通・建設エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知・ドア数判別・ライナー識別信号)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
停止位置 ±750mm(TASCなし)
開口部幅 3,000mm~4,540mm
寸法 筐体(一般部) 高さ最大1,340mm×厚さ約200~360mm
【推定】高さ1.2m
非常脱出口 開き戸式(各編成両数の前部・後部)
安全装置 居残り検知 3Dセンサ

ホームドアのメーカーはこれまでも多くの事業者に大開口ホームドアを納入している三菱重工交通・建設エンジニアリングです。通常の引き戸と二重引き戸の組み合わせによって3,000mmから4,540mmまでの様々な開口幅を作り出し、TASC(定位置停止装置)は未整備なので手動ブレーキングでも余裕をもって停止できる許容範囲±750mmが確保されています。

5号車1番ドアなどの開口部が最も広い
2号車2番ドアなどはごく普通の開口幅
ホーム縁が赤いところは櫛状ゴムの設置および嵩上げが行われている開口部

基本構造はこれまでの同社製大開口ホームドアと変わらないようですが、扉の透過部が下方にだけ小さく設けられている点が他では見ない仕様です。実際に乗車位置の先頭で並んでみると、車両とホームの隙間を確認するにはこのサイズの透過部でも十分に感じました。

また、大阪方のホームが曲線に面している箇所を中心に、隙間を縮小する櫛状ゴムがホームドアとあわせて整備されています。

京阪のトータルブランディングへのこだわりを感じられるデザイン
6号車1番ドアのプレミアムカー乗車位置案内
2・3番ドアにはプレミアムカー乗車口がない旨の案内が

各開口部の案内類ステッカーは京阪標準のサインシステムと統一されたデザインとなっています。扉の縁にはホームドアとしては珍しく引き込まれ注意のステッカーがあり、これも13000系などのドア内側に貼付されているステッカーと同じデザインです。

非常解錠ボタンと支障物検知用3Dセンサ
非常脱出扉の案内。その上は運転士用停止位置マーカー
ホーム側から見た非常脱出扉

安全対策として各開口部の片側に非常解錠ボタンが設けられており、車内からでも分かりやすいように位置を示すステッカーが貼付されていました。同駅のホームドアは通常発着する6・7・8両編成に加えて、臨時で乗り入れることがある4両編成にも対応しており、各編成両数の前部・後部となる位置には乗務員出入り口を兼ねた非常脱出扉が設けられています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

停止位置検知センサは車両連結部のエッジを測定する
在線検知センサ

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知・ドア数判別・ライナー識別)
  • 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)

地上側の各種センサで編成両数・ドア数の判別や車両ドア開閉を検知するシステムと、京阪独自で製作したという「ライナー」を識別する装置の組み合わせによって、車両側の改修をごく最小限としながら全自動での開閉連動を可能としています。

基本的な部分は他の事業者でも多く採用されている方式で「地上完結型連携システム」と呼ばれています。停止位置検知センサ・在線検知センサ・車両ドア開閉検知センサの組み合わせによって、列車が定位置に停止するとホームドアを自動開扉し、発車時は車両ドアの動きに追従してホームドアを自動閉扉します。

2.3 車両ドア開閉検知センサによるドア数・プレミアムカーの判別

6号車3番ドアの車両ドア開閉検知センサ。ドアが存在しなければプレミアムカーと判定する

京阪のシステムで特徴的なのは、車両ドア開閉検知センサがドア自体の有無も検知することで2ドア車と3ドア車ならびに一部列車の6号車に連結されているプレミアムカー(1ドア車)を判別している点です。これはかつて京急電鉄三浦海岸駅で行われたマルチドア対応型ホームドア「どこでもドア®」実証実験時にも使用されたシステムで、本格的に採用されたのは全国でも初めてだと思われます。

1ホームあたりのセンサの数は5基で、そのうち3基はどの車種でも必ずドアがある箇所に、残りの2基はそれぞれ車両によってはドアが無い箇所に設置されています。例えば2ドア車かつプレミアムカーを連結した8000系が入線した場合、前者の3基は本来のドア開閉検知を担い、後者の2基は車両側面の形状[1]ドア部分の凹みがあるか否かを検知していると思われる。を検知することで、各号車の2番ドアならびに6号車プレミアムカーの2・3番ドアを締め切ります。

2.4 RFIDによるライナー識別信号

8000系に搭載された識別信号の送信器と思われる装置
ライナー識別信号の受信用アンテナ

平日ラッシュ時に運行されている8000系を使用した全車両座席指定の「ライナー」列車は偶数号車のドアだけを開閉するため[2]ライナー券が不要な区間は全号車のドアが開く。、ホームドア側も奇数号車のドアを開けないようにする必要があります。前述の地上完結型システムでは列車種別までは判断できないことから、RFIDによってライナー列車であることを識別することにしたそうです。

8000系大阪方先頭車の乗務員室にはライナー運用時のみ識別信号を送信する装置が搭載されました。この信号を下りホーム大阪方にあるアンテナが受信しホームドア制御盤に送ることで、乗務員や駅係員が特別な操作をしなくても偶数号車のドアだけが自動開扉します。

2.5 各種センサの配置

各種センサの配置は上図の通りです。前述のように、車両ドア開閉検知センサのうち3基はどの車種でも必ずドアがある箇所で本来のドア開閉検知を担い、残りの2基はドア自体の有無を検知することで2ドア車およびプレミアムカーを判別しています。

車両にRFIDやQRコードを設置してドア数を判別する方式もありますが[3]RFID方式は阪急電鉄などで、QRコード方式は京浜急行電鉄などで採用。、編成組み換えを比較的頻繁に行う京阪にとっては車両側に一切頼らないこのシステムの方が適しているのかもしれません。

2.6 回送列車などの対策

ホームドア設置に伴い、所定停止位置から約2m手前に「回送」と書かれた停止位置目標が新設されました。回送列車や試運転列車などが停車する場合は、この回送用停目に停車させることでホームドアが自動開扉してしまうのを防いでいます。

3 表示灯

表示灯の表示推移
8000系到着時には「2P」と表示

ホームドアの開閉状態などを示す表示器は、もともと別の場所に設置されていた戸閉合図表示器を一体化したものになりました。

中央の停止位置範囲表示には、3000系なら3ドア車・プレミアムカーありを示す「3P」、8000系なら2ドア車・プレミアムカーありを示す「2P」、ライナー列車は「L」、その他の一般車は両数のみが表示されます。

4 おわりに

製造メーカー標準の大開口ホームドアと制御システム、そして独自のライナー識別信号によって、京阪ならではのさまざまな列車運行に対応したホームドアが実現しました。

今後のホームドア整備については、2020年12月12日の朝日新聞デジタルに掲載された5000系引退を報じる記事に “全駅でホームドアの設置を計画している” との記述があったものの、現時点で公式からの発表は確認されていません。

出典・参考文献

脚注

References
1 ドア部分の凹みがあるか否かを検知していると思われる。
2 ライナー券が不要な区間は全号車のドアが開く。
3 RFID方式は阪急電鉄などで、QRコード方式は京浜急行電鉄などで採用。

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