JR西日本のホームドア:4ドア車用大開口タイプ(JR総持寺駅・高槻駅)

タイプ 腰高式(二重引き戸タイプ)
メーカー JR西日本テクシア・ナブテスコ
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知)
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±1000mm(TASCなし)
開口部幅 3,300mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

2018年3月17日に開業したJR京都線の新駅・JR総持寺駅では、JR西日本の可動式ホーム柵(以下:ホームドア)としては初めてとなる二重引き戸式の大開口ホームドアが開業当初から整備されています。また、2020年度には高槻駅3・4番のりばにも同型のホームドアが設置されました。

1 ホームドアの仕様

従来の4ドア車用ホームドアの標準開口幅は2,800mmでしたが、JR総持寺駅は進入速度が高く雨の影響も受ける地上駅という環境から、TASC(定位置停止装置)無しでも余裕をもって停止できるように許容範囲をさらに広げる必要がありました。

そこで、二重引き戸式ホームドアを採用することで戸袋スペースを縮小しながら開口幅を3,300mmに広げ、停止許容範囲±1,000mmが確保されました。通常は7両編成4ドア車の普通列車のみが発着するホームのため、その他の車種の発着には対応していません。

筐体サイズより扉のほうが長い
扉は互い違いに収納される
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

基本構造や外観は東京メトロ東西線の大開口ホームドアと酷似しています。JR西日本の従来のホームドアは支障物検知センサに3Dセンサと光電式センサを併用していましたが、これまでの稼働実績から3Dセンサのみでも十分な安全性・信頼性が保てるとして光電センサは廃止されています。

右側2つのベースプレートがスライド型?

新駅のJR総持寺駅ならではの特徴として、既存駅のベースプレートはホームスラブ内の鉄筋を交わすために細いボルトを複数使って固定していたのに対し、JR総持寺駅ではホーム設計時にあらかじめベースプレート締結ボルト位置を考慮したことで太いボルト1本だけで固定することができたそうです。

また、筐体がホームスラブの構造目地を跨いでしまう個所では、上下2枚構造のベースプレートが横方向にスライドすることで温度によるスラブの伸縮を吸収できるようになっています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

JR西日本在来線のホームドア・昇降式ホーム柵は、車両側との通信を必要とせず、地上側の各種センサが列車の定位置停止・編成両数などを検知して自動開扉するシステムが採用されています。一方、閉扉は車掌による手動操作で行います。

システムの詳細は別記事で紹介しています。

JR総持寺駅の当初の光電センサ式操作盤
※現在は押しボタン式に交換済み
高槻駅の押しボタン式操作盤

本タイプに関連した特記事項として、これまでJR西日本の標準だった光電センサ式の車掌用開閉操作盤はJR総持寺駅が最後の採用駅になり、2018年度以降に設置された筐体からは低コスト化を図った押しボタン式に変更されました。

2.2 JR総持寺駅 “ホームドアを開けさせないための” 編成検知システム

本来なら特定の編成編成だけが発着するホームに編成検知システムは不要ですが、JR総持寺駅は緊急時に6両または8両編成3ドア車の快速列車が停車することを想定して[1]そのためJR総持寺駅のホーム有効長は8両分ある。ただし大阪方1両分は柵で区切られて立ち入りできない。、ホームドアの自動開扉を防ぐ目的で編成検知システムも導入されました。このような “ホームドアを開けさせないための方法” についても別記事でまとめて紹介しています。

3 おわりに

高槻駅3・4番のりばの時点で4ドア車用ホームドア設置駅は6駅12ホームとなりました。二重引き戸式は運転士の負担を軽減できる一方、構造が複雑になり重量も増加してしまうデメリットもあります。この課題を解決するために、JR西日本テクシアは扉部分をバー構造とするなど大幅な構造簡略化を図った「改良型可動式ホーム柵」の開発を進めており、実用化されれば更なる整備促進に繋がるでしょう。

出典・参考文献

脚注

References
1 そのためJR総持寺駅のホーム有効長は8両分ある。ただし大阪方1両分は柵で区切られて立ち入りできない。

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