JR東日本 横浜線のホームドア:町田駅スマートホームドア 連携化とTASC使用開始

JR東日本のグループ会社であるJR東日本メカトロニクスが開発した「スマートホームドア」は、2016年12月から横浜線の町田駅4番線で試行運用が行われおり、今後は同駅の1番線や京浜東北線蕨駅などで本格導入されることが決まっています。

町田駅ではこれまで車両側と直接連携しない方法で開閉を行っていましたが、稼働開始から2年以上が経過した2019年3月9日に運用方式が変更され、車両と連携して開閉するようになりました。

1 以前の開閉方式

定位置停止検知センサ

稼働開始当初から3月8日までのホームドア開閉方式は以下の通りでした。

  • 開扉:自動(定位置停止検知)
  • 閉扉:車掌手動操作

2016年当時、横浜線のE233系6000番台には車両ドアとホームドアを開閉連携するための装置が搭載されていませんでした。そのため、ホーム東神奈川方先端に設置された3Dセンサで最後部の車両前面を測定し、停止許容範囲内への停止を検知すると自動的にホームドアを開扉する方式が採用されました。

一方の閉扉は、車掌の操作で先にホームドアを閉めてから車両ドアを閉めるという流れでした。私はその頃の様子を直接見たことはないのですが、開閉ともにホームドアと車両ドアは完全に別々の動作だったため時間のロスが大きかったようです。

2 3月9日以降の開閉方式

新設されたTASC地上子(手前)とホームドア地上子(奥)
ホームドア地上子(P0)

TASC地上子(P3)

横浜線が乗り入れる京浜東北・根岸線では2016年度から順次ホームドアの整備が始まります。京浜東北・根岸線のホームドアは山手線と同じくトランスポンダを用いた開閉連携方式のため、横浜線のE233系にもホームドア車上装置やTASC(定位置停止装置)を搭載する工事が行われました。

そして3月9日より町田駅のホームドアもトランスポンダ式連携に改められ、ホームドアと車両ドアはほぼ同時に開閉するようになりました。同時にTASC(定位置停止装置)の使用も開始されましたが、JR東日本ではTASCの位置付けをあくまでも “停止精度確保のための支援装置” としているようで、初動のブレーキングは運転士が行い、停止位置約140m手前のP3地上子を通過するとTASC制御が始まります[1]距離情報を補正するために停止位置約20m手前にP2地上子、約2m手前にP1地上子がある。

定位置に停止すると、最後尾1号車のホームドア車上子とP0地上子がピッタリと重なり電磁的に結合し、車両ドア開閉操作などを地上側と送受信することでホームドアも同期して開閉します。同駅のスマートホームドアは元々手動ブレーキングだったため開口幅2,800mm・許容範囲±750mmとして停止精度に余裕を持たせていましたが、TASC使用開始後の許容範囲は山手線・京浜東北・根岸線と同じ±350mmに狭められました。

3 おわりに

停止範囲が狭められたため8号車狭小ドアピッチ部の特殊開口は事実上不要に

前述の通り、京浜東北・根岸線のホームドア整備のために横浜線E233系も対応工事が完了していたことから、同駅でもトラポン連携化が可能になりました。しかし、これから車両側の改造も含めて新規にホームドア設置が始まる各路線では、整備にコストが掛かるトラポン連携式は採用されない可能性があります。

実際、総武快速線の新小岩駅に設置されたホームドアには低コストな無線式連携システムが採用されており、この方式が他線区にも広がりそうな予兆も見られます。JR東日本は2032年度までに首都圏の全駅にホームドアを設置することを発表していますが、もしかしたら今後トラポン連携式は少数派になっていくのかもしれません。

出典・参考文献

脚注

References
1 距離情報を補正するために停止位置約20m手前にP2地上子、約2m手前にP1地上子がある。

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