JR東日本のホームドア:単線駅・行き止まり駅に特化した無線連携システム(成田空港駅・空港第2ビル駅)

2020年度にJR成田線の成田空港駅・空港第2ビル駅で整備された昇降式ホーム柵には、長年主流だったトランスポンダ式連携よりも低コスト・短期間で整備することが可能な無線式連携システムが使用されています。JR東日本としては総武快速線新小岩駅と相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅[1]JR側の発着時のみ。で実績のあるシステムですが、両駅では従来よりもさらに車両改造を簡略化することができる、路線・駅の構造的な特徴を活かした新方式となりました。

1 従来の方式

従来の方式は、使用する無線の電波にLF帯(長波)とUHF帯(極超短波)の二種類を使い分けています。その理由は、隣接する複数のホームに列車が在線していても車両とホームドアの関係を確実に結びつけるためで、これによって信頼性のある開閉連携が実現されています。詳しくは別記事で紹介しています。

この方式の問題点は、隣接ホームとの混信を防ぐために伝搬距離が狭いLF帯無線の特性上、地上側と車上側それぞれのアンテナを極力近接する場所に設置しなければならないことでした。そのため、高運転台の特急型車両などは望まれた位置にアンテナを設置できない場合もあります[2]相鉄12000系では前面FRPにアンテナ専用スペースを設けるなど工夫が施されています。

2 単線駅・行き止まり駅に特化した新方式

2.1 新方式の概要

2020年3月に昇降式ホーム柵が稼働開始された成田空港駅・空港第2ビル駅はどちらも単線区間で、空港第2ビル駅は1面1線の単式ホーム、終点の成田空港駅は1面2線の行き止まり構造となっています。このような構造の駅では、どちらの駅も2つの列車が同時に発着することはあり得ないため、LF帯無線を使用せずにUHF帯無線のみで制御することが可能になりました。

このような単線駅・行き止まり駅に特化した新方式での基本動作は以下の通りです。

  1. 地上装置がどのホームに列車が入線したかを特定
  2. 列車が地上側からのUHF受信範囲に入ると車上装置が持つ固有のIDを地上側に送信
  3. 地上側は受信したID宛へ入線したホームのUHFチャンネルを送信
  4. 車上側は地上側から受信したUHFチャンネルに切り替える

以降の動作は従来方式と同じで、UHF帯無線により車両ドアとホーム柵の連携が行われます。

2.2 現在は開扉のみ連携

この新方式の採用によってLF帯無線アンテナの必要がなくなり、従来方式では難しかった高運転台の特急型車両であるE259系にも無線連携装置が搭載されました。ただし、現在のところ連携動作しているのは開扉操作のみで、閉扉は車掌による手動操作で運用されています。このような扱いになっている理由は不明ですが、新しいシステムがまだ完成形ではないのでしょうか。

成田空港駅に停車中のE259系特急「成田エクスプレス」と昇降式ホーム柵

3 おわりに

本記事で紹介したシステムは単線駅・行き止まり駅に特化した方式ですが、複数列車が同時に発着する一般的な駅においてはLF帯無線の代わりにRFIDタグを用いて車両とホームドアを紐づける新方式も検討されており、JR東日本の今後ホームドア整備が始まる路線ではこの方式が標準になる模様です。

出典・参考文献

  • 根本 卓、千葉 正志、布施 毅、横山 啓之、笠井 貴之、山上 正規「総武快速線新小岩駅ホームドア連携システム導入に向けた開発と今後の展開」『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』Vol.56、日本鉄道サイバネティクス協議会、2019年

脚注

References
1 JR側の発着時のみ。
2 相鉄12000系では前面FRPにアンテナ専用スペースを設けるなど工夫が施されています。

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