相模鉄道のホームドア:横浜駅のタイプ

タイプ 腰高式
メーカー 高見沢サイバネティックス
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 【推定】±350mm(TASCあり)
開口部幅 一般部 【推定】2,600mm
大開口部 【推定】3,500mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 光電センサ(一部3Dセンサ)

相模鉄道の横浜駅では、2015年度末に同社初となるホームドアが3番線に設置されました。その後、2017年2月までに6面3線の乗車ホーム・降車ホーム全てでホームドア整備が完了しています。各ホームの稼働開始日は以下の通りです。

  • 3番線:2016年3月6日
  • 2番線:2016年12月20日
  • 1番線:2017年2月21日

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

ホームドアのタイプは腰高式、メーカーは高見沢サイバネティックスです。素材の質感をそのまま活かしたようなメタリックなデザインが特徴です。

車種によるドア位置の違いがあるためか、基本開口幅は推定2.6mなのに対して停止許容範囲は推定±350mmと狭めです。終端駅のため進入速度が遅いとはいえ、以前はTASC(定位置停止装置)が未整備だったことを考えるとかなりシビアだったでしょう[1]現在は横浜駅も含め相鉄全線でTASCが整備されている。

開閉動作中はLEDバーが赤色に点滅する
車両ドア間の筐体
車両連結部の筐体

筐体は左右の扉が互い違いに収納される戸袋一体型です。開口部の両脇に「誘導LED」が搭載されており、開扉中は青色に点灯、開閉動作中は赤色に点滅します。非常脱出ドアは設けられておらず、開口部両側にある赤色のボタンが非常開ボタンですが、2023年3月18日時点で旅客向けの表記は一切ありませんでした。

1.2 1・10号車の大開口部

ホーム両端の大開口部

ホームの両端に位置する1号車1番ドアと10号車4番ドアが推定幅3.5mの大開口となっています。これはドア位置が大きくオフセットしている11000系や12000系に対応するためで、設置当時は在来線のホームドアで最大の開口幅でした。

1.3 乗務員扉部分の特殊配置・センサの違い

乗務員出入りのための特殊な配置
開口部側の仕切りを開けて出入りすることも可能

ホーム両端および8両編成の先頭部分には乗務員出入り用の開き戸が設けられており、片側の筐体だけをセットバックさせて出入りスペースを確保しています。3番線だけは事業用車両700系の停止位置(6-7号車連結部)にも扉が設けられていますが、将来の相鉄・東急直通線開通で6両編成が入線することも想定していたのかは不明です。

開口部によるセンサ方式の違い

各開口の支障物センサは、基本的に複数の光電センサを縦に並べたラインセンサですが、筐体セットバックがある開口部のみ3Dセンサが採用されています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

2020年6月21日以降のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)

列車が停止位置許容範囲内に停止すると、ホームドアは乗車ホーム側・降車ホーム側の両方が自動開扉します。当初、閉扉は乗務員による手動操作[2]基本は車掌、降車ホーム側は運転士が行う場合あり。でしたが、現在はドア開閉検知センサの増設によって閉扉も自動化されました。

2.2 列車停止検知システム

列車の定位置停止を判定する列車停止検知システムは、2017~2018年頃にシステムの変更が行われた可能性があります。しかし正確な情報は分かっていないため、この項は全て推測での記述となりますが、設置当初からの方式を旧システム、後に追加された方式を新システムとして表記することとします。

(1)旧システム(前面検知方式)

2021年10月末時点で現存している前面検知センサ

ホーム終端部に測域センサ(2D-LiDER)が設置されており、このセンサが車両前面を測定することで列車の定位置停止を検知します。しかし、形式によって先頭車の車体長や前面形状が異なると正確な検知が難しい場合もあり、同駅のシステムが変更されたのもそういった問題が発生したためかもしれません。

システム変更の原因と噂された20000系
※写真は8両編成バージョンの21000系

システム変更に関連していると思われるのが2017年に製造された新型車両20000系です。20000系は当初2017年12月の営業運転開始を予定していましたが、“地上設備の調整等に時間を要したたため” という理由で2018年2月まで延期されました。あくまでも噂ですが、その地上設備の調整というのが横浜駅ホームドアのセンサだったという話があります。

(2)新システム(連結部検知方式)

北陽電機製のレーザスキャナが2基縦並びで取り付け
20000系の連結部位置を測定中

ちょうど20000系のデビュー延期と同時期に、各ホーム1-2号車連結部付近に測域センサが新設されました。連結部は形式による形状の違いが少なく検知が比較的容易と言われています。ただし、連結部検知センサ新設後も前面検知センサは撤去されていないため、在線検知など別の役目を引き続き担っている可能性も考えられます。

2.3 車両数判別システム

9号車部分で車両を検知していなければ8両編成と判定
3番線のみ6号車部分にも設置されている

相鉄線では10両編成と8両編成が運行されているため、車両の有無を検知するセンサで編成両数を判別しています。センサは8号車と9号車の2箇所に設置されており、入線列車が10両編成なら両方を、8両編成なら2基中1基のみを車両が塞ぎ停止するため、その結果に基づいてホームドアを自動開扉します。

2.4 ドア開閉検知センサの増設

ドア開閉検知センサ
3番線乗車ホームに試験設置されていた頃の写真

ドア開閉検知センサは2018年度末ごろに3番線の乗車ホームに試験設置され、実際のホームドア開閉とは連動させずにテストを行っていたようです。その後全てのホームにセンサが増設され、2020年6月21日の始発から連動機能が使用開始されました。

同駅のドア開閉検知センサはホームドア本体と同じく高見沢サイバネティックスの製品で、この製品はセンサに加えてカメラも搭載しており、将来的には乗降中の旅客を検知するような使用法も考えられているそうです。

なお、2019年11月に開業した羽沢横浜国大駅では車両ドア開閉検知によるホームドア閉扉連動を既に実現していたので、これで両駅とも基本的な取り扱いが統一されたことになります。

2.5 各種センサの配置図

各種センサの配置は上図の通りです。3番線のみ4両編成の事業用車両を判別するためと思われる両数検知センサが6号車部分にも設置されています。ドア開閉検知センサも3番線降車ホームだけが他のホームと異なる位置となっていました。

2.6 乗務員用操作盤・表示灯など

乗務員操作盤の開閉ボタンは2つずつ用意されている

開閉が自動化された現在は通常使用されませんが、10両・8両それぞれの前部・後部および3番線6-7号車連結部に乗務員用操作盤が設けられています。「ホームドア状態表示灯」は開閉動作中に赤色で点滅し、開扉中は点灯します。

車止め付近の運転士向けは緑色に点灯
足元付近の車掌向けは青色に点灯

また、車掌向けは操作盤の足元付近に、運転士向けはホーム終端の車止め付近に、列車が定位置範囲内に入ると点灯する「定位置表示灯」が設けられています。

3 おわりに

3番線降車ホームに掲示されている高見沢サイバネティックスの広告

相鉄は2022年度末までに全駅へのホームドア設置を計画しており、新駅の羽沢横浜国大駅以外でも2020年度から本格的な整備が開始されています。これら羽沢横浜国大駅以降の各駅では横浜駅と異なるメーカーの製品が採用されましたが、シルバー基調のデザインは横浜駅を継承しているようにも感じられます。

出典・参考文献

脚注

References
1 現在は横浜駅も含め相鉄全線でTASCが整備されている。
2 基本は車掌、降車ホーム側は運転士が行う場合あり。

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