相模鉄道 ホームドア未設置駅の仮設転落防止柵

相模鉄道のホームドア未設置駅では、相鉄・東急直通線の開業によって転落防止幌を装着していない東急車が乗り入れを開始することから、2022年10月下旬より順次「仮設転落防止柵」が設置されました。

1 仮設柵が設置された理由

仮設転落防止柵設置のお知らせ(西横浜駅にて)
ご丁寧に「東急車両の試験運転等に伴い~」と記載されている
東急3000系の車両連結部
転落防止幌を装着していない
相鉄11000系の車両連結部
自社車両はすべて転落防止幌を装着している

2023年3月18日に相鉄・東急直通線(新横浜線)が開業したことにより、相鉄線には東急電鉄の車両も乗り入れるようになりました。しかし、東急目黒線系統の3000系・5080系・3020系[1]3020系は現時点で相鉄直通非対応だが将来的に対応予定。はもともと走行する全区間にホームドアが設置されていたことから[2]目黒線および直通する都営地下鉄三田線・東京メトロ南北線・埼玉スタジアム線。、車両連結部間の転落防止幌を装着していません。

相鉄も当初は2022年度末までにホームドア全駅設置を計画していましたが、様々な社会情勢が影響したのか計画に遅れが生じ、直通線開業までに全駅設置を完了することが困難になってしまいました。これによって、転落防止幌を装着していない目黒線系統の東急車を走らせるためには、国土交通省が省令で定めている「車両連結部間の転落防止設備」を駅側で対策する必要性が生じました。

旅客列車の車両の連結部(常時連結している部分に限る)は、プラットホーム上の旅客の転落を防止するため、転落防止用ほろ等転落防止設備を設置する。ただし、プラットホームの設備等により旅客が転落するおそれのない場合は、この限りでない。

『公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン(車両等編)』より

そこで、相鉄線内で東急車の試運転が開始されるのを前に、ホームドア設置が間に合わない駅では仮設の転落防止柵を設置することで省令に対応しました。柵本体に掲示されているお知らせの通り、設置期間はホームドアが設置されるまでとなっています。

2 仮設柵の配置・構造

仮設柵は8両編成の連結部だけに設置されている(星川駅にて)

仮設柵が設置されているのはちょうど車両連結部にあたる部分のみで、あくまでも停車中の転落防止だけを目的としていることが分かります。また、目黒線系統の東急車はすべて8両編成なので、8両編成が停車しない範囲には設置されていません。

ホーム側から見た仮設柵
線路側から見た仮設柵

柵の構造はまさしく仮設といった感じで、工事現場などで見かけるプラスチック製のフェンスを、鉄パイプを組み合わせた支柱にワイヤーで固定しています。既にホームドア設置用の削孔が完了している駅もありますが、仮設柵の基礎はその部分をうまく避けているのが見て取れます(右上写真)。

車種によって色分けされている乗務員向け停止位置マーカー(星川駅にて)
縁端部にあるのが車掌用、中央にあるのが運転士用

柵設置によって停止位置の大幅なずれが許容できなくなったため、停止許容範囲は推定±750mmに制限されていました[3]ホームドア設置駅の場合は推定±350mm。。ホームドア設置駅と同じく乗務員向けの停止位置マーカーが設けられていて、運転士向けは運転席に座った状態でも見えるようにホーム内側の床面に直接貼付されている場所もあります。

3 おわりに

相鉄の2023年度設備投資計画によると、残るホームドア未設置駅のうち海老名駅を除く8駅は2023年度中に設置予定で、早くも仮設柵を撤去してホームドアが設置された駅もあります(いずみ野駅など)。一方、海老名駅の設置予定は2027年度まで延期されているため[4]駅改良工事遅れの影響と思われる。、当面はこの仮設柵のままとなるのでしょうか。

出典・参考文献

脚注

References
1 3020系は現時点で相鉄直通非対応だが将来的に対応予定。
2 目黒線および直通する都営地下鉄三田線・東京メトロ南北線・埼玉スタジアム線。
3 ホームドア設置駅の場合は推定±350mm。
4 駅改良工事遅れの影響と思われる。

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