りんかい線のホームドア:現行タイプの仕様と開閉方式

タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通機器エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(在線検知・定位置停止検知)
閉扉 自動(ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 【推定】±750mm(TASCなし)
開口部幅 一般部 【推定】2,800mm
大開口部 4,130mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ(一部光電センサ)

東京臨海高速鉄道りんかい線の国際展示場駅では、2018年9月30日に同線初のホームドアが稼働開始されました。同駅は東京ビックサイトの最寄り駅の一つで、コミックマーケットなどの大規模イベント開催時にはホーム発着時に徐行25km/h制限がかけられることもありましたが、ホームドア設置によってこの措置は行われなくなりました。

翌年度は同線で最も乗降客数の多い大井町駅にも整備され、2022年度までに同社が管轄する7駅中5駅で整備が完了しています。

1 ホームドアの仕様

国際展示場駅のデザイン
大井町駅下りホームのデザイン
大井町駅上りホームのデザイン

ホームドアのタイプは腰高式で、メーカーは三菱重工交通機器エンジニアリング[1]現:三菱重工交通・建設エンジニアリングです。TASC(定位置停止装置)等の運転支援装置は未整備なことから、基本の開口幅を推定2,800mmとして停止位置許容範囲が広めに確保されています。

りんかい線の駅サイン類に準じて、下り(大崎方面)は緑色、上り(新木場方面)は青色のラインが筐体に施されています。また、最初に整備された国際展示場駅は扉部分が白一色でしたが、大井町駅からは扉部分も方面別のラインカラーに塗装されました。

1号車1番ドア・10号車4番ドアの二重引き戸式大開口部
E233系と70-000形の先頭車ドア位置の違い

構造面での最大の特徴は、両先頭車の乗務員室直近にあたる開口部が幅4m超の大開口となっている点です。これは直通運転を行うJR東日本・埼京線のE233系は先頭車のドアピッチが変則的で、自社所有の70-000形とはドア1つ分以上のずれが生じているためです。

ちなみに、国際展示場駅に設置された当時は相模鉄道横浜駅を抜いて在来線のホームドアで最大の開口幅となったのですが、わずか数ヶ月後には京成電鉄日暮里駅でさらに巨大な開口が登場しました。

変則ドアピッチ部分の筐体は線路方向の長さが1mもない
1ホームあたり5か所に非常停止ボタンが内蔵されている
非常開スイッチは各開口の両側に設置

筐体は左右のドアが互い違いに収められる戸袋一体型です。各開口の居残り検知センサは3Dセンサですが、最後部側の大開口部には3Dセンサの代わりに2点の光電センサらしき穴が見えます。これは車掌を支障物として検知しないための対策でしょうか。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

りんかい線のホームドアの開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(在線検知・定位置停止検知)
  • 閉扉:自動(ドア開閉検知)

りんかい線のホームドアは、地上側の設備のみで車両の動きに追従した自動開閉を行う「地上完結型連携システム」によって制御されています。このシステムは三菱重工交通機器エンジニアリングとJR東日本メカトロニクスが共同開発したもので、当初は「地上完結型簡易連携システム」と称されていました。

ホーム頭上には車両の動きを検知する3種類のセンサが設置されており、列車が停止位置許容範囲内に停止するとホームドアを開扉し、車両ドアが閉まり始めるとホームドアも追従して閉扉します。車両側の改修を必要とせずに開閉連動を行えることが最大のメリットで、車掌の業務負荷増大も抑えられます。

このシステムは2016~17年に京急電鉄三浦海岸駅で行われたマルチドア対応型ホームドア「どこでもドア®」実証実験時に使用された後、2018年2月に京成電鉄日暮里駅のホームドアにて実用化されましたが、当初は車種・編成両数の判別を行う目的で導入され、ホームドアの開閉自体は車掌による手動操作だったため、全自動で開閉制御を行う本来の連携システムとしては国際展示場駅が導入第一号となりました。

2.2 各種機器の概要

定位置停止検知センサ
在線検知センサと車両ドア開閉検知センサ

(1)定位置停止検知センサ

測域センサ(2D-LiDAR)で車両の連結部を測定することで、列車が許容範囲内に停止したことを検知します。センサの数は1ホームにつき1箇所です。

(2)在線検知センサ

在線検知センサはホーム両端の1号車と10号車にあたる場所で車両の有無を検知します。りんかい線は通常10両編成しか運行されていないため、この2箇所で車両を検知すれば列車がホーム内に収まっていると判定しているのだと思われます。

(3)車両ドア開閉検知センサ

測域センサ(2D-LiDAR)が車両ドア上部に設置されており、車両ドアの開閉状態を検知します。設置場所はホームによって異なりますが1ホームにつき3箇所です。

(4)ホームドア表示灯

車掌用表示灯の列車入線時における表示推移
運転士用表示灯は停止位置前方のトンネル壁面に設置

ホームドアの開閉状態などを示す表示灯は運転士用と車掌用がそれぞれ設けられており、車掌用は筐体センサボックスに内蔵されています。列車発着時における表示の推移は以下の通りです。

  1. 進入側の在線検知センサが車両を検知すると下段に「A」が点灯
  2. 列車が定位置停止検知センサの検知範囲に進入すると上段に「□」が点灯
  3. 列車が定位置範囲内に進入すると上段に「■」が点灯
  4. ホームドアが自動開扉すると上段に「✕」が点灯
  5. ホームドアが全閉すると上段に「■」が点灯
  6. 列車が定位置範囲を離れると上段が「□」→消灯
  7. 在線検知センサが2基とも非検知になると下段の「A」が消灯

2.3 各種機器の配置図

例として、国際展示場駅と大井町駅の各種センサ配置図を上に示します。国際展示場駅では定位置停止検知センサが進行方向1両目と2両目の連結部に設置されて対し、大井町駅は9・10号車付近のホーム天井が低いためか、2番線の定位置停止検知センサは9-8号車間となっています。

大井町駅1番線
サイズが一回り小さい在線検知センサは天井が低くても設置できている

3 おわりに

国際展示場駅のホームドア整備後、JRのE233系7000番台には羽沢横浜国大駅で使用する無線式ホームドア連携システムが搭載されましたが、自社の70-000形は未改造のため今後も当分の間は現行のシステムで運用されるものと思われます。

残る未整備駅のうち、新木場駅は2025年度中に整備される予定で、東雲駅についても導入に向けて引き続き検討しているとのことです。同社は2024年度から新型車両の導入予計画しており、70-000形が置き換えられるとホームドア制御システムにも何らかの動きがあるかもしれません。

出典・参考文献

脚注

References
1 現:三菱重工交通・建設エンジニアリング

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