京急電鉄のホームドア:上大岡駅の仕様

タイプ 腰高式(一部は二重引き戸タイプ)
メーカー ナブテスコ
開閉方式 自動(QRコード式連動)
停止位置許容範囲 不明(TASCなし)
開口部幅 一般部 【推定】3,200mm
拡幅開口部
二重引き戸部
【推定】3,400mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

京浜急行電鉄の上大岡駅では、2019年11月30日に下りホーム、2020年2月15日に上りホームでホームドアの稼働が開始されました。京急線内のホームドア設置駅はこれで5駅目となります。1番線以外の3ホームには、横浜駅1番線に続いて一部号車のみ二重引き戸タイプが採用されました。

1 ホームドアの仕様

1.1 1番線の仕様

稼働開始直後の2020年12月1日に撮影
ホームドアは8両分だけが設置され、残りの範囲には後に手動柵が設置された

上大岡駅は4つのホーム全てが12両編成の発着に対応していますが、1番線(下り待避線)は基本的に12両編成が入線しないためか8両分だけのホームドアが設置されました。一方、残りの範囲(浦賀方1両分・品川方3両分)は稼働開始後もしばらくの間は何の転落防止措置も無い状態でしたが、数か月後に後述する手動式の可動柵が設置されました。

他のホームも含め、基本仕様は羽田空港第1・第2ターミナル駅以降の標準どおりです。

1.2 2~4番線の仕様

4番線品川方のホームドア
12両用の乗車位置ステッカーは貼られていない

1番線以外の3ホームは12両分のホームドアが設置されました。4番線(上り待避線)も基本的に12両編成が入線することはないのですが、輸送障害時など万が一の場合に使用できるよう考慮されたのでしょうか。ホームドア側面や足下の乗車目標表示も8両分しか用意されていないため、何のステッカーも貼られていない真っ白なホームドアをここでは見ることができます。

2番線の10号車部分
一番手前の開口部が拡幅開口
横浜駅1番線に続いて出現した謎の二重引き戸タイプ

1番線とは異なり、場所によって通常より幅の広い開口が設けられています。これは、先頭車が僅かに長い2100形と他形式と連結した場合のドア位置のずれを考慮したものだと思われ、同じ12両対応ホームの京急蒲田駅3・6番線および横浜駅にも設けられていました。

さらに同駅では、横浜駅1番線に続いて一部号車に限り二重引き戸タイプが採用されました。しかし異なるのはその配置で、横浜駅1番線は最後部の12両目部分に設けられていたのに対して、同駅はホームから見て右から9両目[1]ホームが海側にある2・4番線は9号車、山側の3番線は5号車。に設けられてます。さらに開口幅も横浜駅タイプより少し広く見えました(推定3,400mm)。

当記事3項の図を見ると分かるように、京急蒲田駅などの拡幅開口だけが設けられているパターンとの違いは、9両目部分に12両編成以外の編成両数も停車することです。これにより9両目においてはドア位置のずれがさらに複雑化するため、通常のホームドアでは構造的に対応しきれず、二重引き戸タイプの大開口ホームドアを採用したのだと推測しています。

拡幅開口および二重引き戸タイプについては別記事で詳しく紹介しています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 一般列車の場合

京急電鉄のホームドア開閉方式は、車両側の改修を必要とせずに編成両数・ドア数の判別およびホームドア開閉を自動化できるQRコードを用いたホームドア制御システムが採用されています。

システムの概要は別記事で紹介しています。

ホームドア稼働開始にあわせて設置されたQRコードを明々と照らすライト
QRコード読み取りカメラの位置にだけライトがあるのが分かる

しかし、駅ビルの中にホームがある上大岡駅は昼夜問わずやや薄暗い状態となっています。この同駅特有の環境がQRコードの読み取り性能に影響してしまうことがあったためか、QRコード読み取りカメラには車両のQRコードを照らすLEDライトが設置されました。当該のドアから降車する乗客にとってはまるでスポットライトを浴びているかのような構図となっています。

2.2 座席指定列車「モーニング・ウィング号」の場合

平日朝の座席指定列車「モーニング・ウィング号」は、各停車駅ごとに定められた一部のドアのみを開閉します。このような特殊取り扱いを行う関係で、ホームドア開閉は駅係員が各開口部の個別操作スイッチで行っています。

「モーニング・ウィング号」発着時の取り扱いについては別記事をご覧ください。

3 ホームドアタイプと各種機器の配置

上りホーム3・4番線
下りホーム1・2番線

拡幅開口・二重引き戸タイプの配置、および各編成両数の停止位置とQRコード読み取りカメラ・定位置停止検知センサの位置関係を表した図です。前述したように、拡幅開口および二重引き戸タイプの配置は「ホーム側から見て何両目か」によって決まっていることが分かるかと思います。

4  下り普通列車の着発線変更

2番線の定位置停止検知センサ

下りホームのホームドア設置にあわせて、全ての下り普通列車が1番線発着に変更されています。この変更により、同駅で待ち合わせを行わない普通列車も必ず1番線に入線するようになりました。

変更理由として考えられるのが2番線の停止位置設定です。3項の図を見ると分かるように、2番線ではホームドア設置と同時に4・6両編成の停止位置が浦賀方に偏った位置へと変更されました。また、定位置停止検知センサは他のホームとは違い12両編成基準で3-4号車間の連結部に設置されています。

駅構造との兼ね合いでセンサの位置が偏ってしまったのか、逆に4両・6両の停止位置をこの位置にせざるを得ない別の理由があったのかは分かりませんが、この停止位置の偏りが利用客にとって不便になってしまうために着発線が1番線に固定されたのかもしれません。

5 1番線の両端部に設置された手動柵

手動式固定柵の外観
開口幅はホームドアと同等
折り畳み式の部分はかなり複雑な構造

前述の通り、1番線のホームドアが設置されなかった残りの範囲(浦賀方1両分・品川方3両分)は稼働開始後もしばらくの間は何も無い状態が続いていましたが、2020年2月頃より手動式の可動柵が設置されました。横浜駅上りホームの旧1番線側に設置されている手動柵とは異なり、パンチングメタルを主とした構造です。

開口幅はホームドアと同等の3,200mmで、しっかりと点字ブロックも整備されています。基本は両開き構造ですが、ホームドアとの境界部分や乗務員出入り用の開口が設けられた部分では戸袋スペースを確保できないため、扉を二重や三重に折りたたむ構造となっています。

6 おわりに

上大岡駅の次にホームドアが整備された京急川崎駅でも待避線ホームは8両分のみの設置となり、他の範囲には上大岡駅と同じ手動柵が設置されました。また、12両分が設置された本線ホームは上大岡駅と同じ法則に基づいて拡幅開口と二重引き戸タイプが配置されていました。

出典・参考文献

脚注

References
1 ホームが海側にある2・4番線は9号車、山側の3番線は5号車。

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