JR東日本 横須賀線・総武線快速のホームドア:新小岩駅のタイプ

2011年7月以降、他の駅より突出して人身事故が急増するようになったJR総武線の新小岩駅。沿線自治体の葛飾区や千葉県市川市からも早期の対策が求められた結果、駅の南北自由通路整備に伴うホーム改修にあわせて総武快速線ホーム3・4番線へのホームドア設置が決定しました。

JR東日本では初めて採用された無線連携式開閉システムの調整に時間を要したため、当初予定より1ヵ月ほど遅れた2018年12月8日に稼働開始となりましたが、JR東日本の在来線としては山手線・京浜東北線以外のホームドア設置は同駅が初めてです[1]試行導入駅を除く。

1 ホームドアの概要

タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー JR東日本メカトロニクス・三菱重工交通機器エンジニアリング
開閉方式 無線式連携
停止位置 ±750mm(TASCなし)
開口部幅 2,800mm
寸法(一般部) 筐体 【推定】高さ1.3m×厚さ0.2m
【推定】高さ1.2m
非常脱出口 なし
安全装置 居残り検知 3Dセンサ

ホームドアのタイプは山手線・京浜東北線と同じく腰高式ですが、TASC(定位置停止装置)等の運転支援装置は未整備のため、開口幅を2,800mmに広げて許容範囲±750mmを確保しています。ホームドアの製造メーカーはJR東日本メカトロニクスとされていますが、三菱重工交通機器エンジニアリングによるOEM(受託製造)だったようです。

非常開ボタンと支障物検知センサ
駅係員操作盤が内蔵されているため分厚い7号車1-2番ドア間の筐体
二重引き戸を収納する筐体

見た目的には、扉の外観など三菱重工製ホームドアの標準的な仕様と、各開口の非常開ボタン・支障物検知センサの形状などJR東日本の既存ホームドアと仕様を合わせている点が混在しています。

総武線快速で使用されるE217系[2]2020年からはE235系1000番台の導入が開始。は、前頭部に衝撃吸収構造を採用している関係でドアピッチが狭くなっている部分があるため、1号車・11号車・増1号車・増4号車の4カ所は二重引き戸タイプとして戸袋スペースを確保しています。この部分の筐体構造は同メーカー製のりんかい線国際展示場駅ホームドアとほぼ同一で、幅が約800mmしかない一方で厚さは約400mmもあります。

ホーム側から見たグリーン車部分
線路側から見たグリーン車部分

同駅は首都圏の2階建てグリーン車が連結されている路線で初のホームドアでした。グリーン車部分の開口幅も普通車部分と同じく2,800mmで、ドア間も特別な処理は施されず白い壁がズラリと並んでいます。

2 ホームドアの開閉方式

地上側の無線式連携システム機器

同駅のホームドアは、無線通信を用いて車両ドアとホームドアの開閉を連携する無線式ホームドア連携システムが使用されています。ホームドアの連携方式として長年主流だったトランスポンダ式は、地上側と車上側それぞれに装置を整備するまでに多くの費用や時間を要しました。それに対して、無線連携式は車両側の改修も含めて低コスト・短期間で整備が可能になったそうです。

システムの概要は別記事で紹介しています。

上図は新小岩駅の定位置検知センサとアンテナBOXの配置を示しています。停止位置検知センサは両ホームとも千葉方に1箇所、アンテナBOXは11両編成・15両編成それぞれの前部・後部となる箇所に設置されており、地上側は車上側がどのアンテナで応答しているかを認識することにより編成両数の判別を行うことができます。

ホームドア状態表示板

車掌や駅係員に対してホームドアの開閉状態や故障状態などを表示する状態表示板は、「連携」「ラッシュ[3]閉扉のみ非連携扱いになるモード。」「分離」という運転モードを表示する3つのランプが設けられていた山手線や京浜東北・根岸線とは異なり、それらが1つのLED表示器に置き換えられてシンプルな構造となりました。なお、同駅にラッシュモードが備わっているかは不明です。

3 おわりに

人身事故の急増から「自殺の名所」というレッテルを貼られてしまい、ホームのベンチの向きを変える、屋根を半透明にして青色の光を採光する、特急列車通過時には警備員がロープを張るといった様々な対策が行われてきた同駅ですが、ホームドア設置によって人身事故件数は大幅に減少しています。

最大15両編成、グリーン車連結路線、TASC未整備、無線連携システムの採用など、JR東日本にとって初の試みづくしでもあった同駅は、日本のホームドア史において大きな出来事だったと言えるでしょう。

出典・参考文献

脚注

References
1 試行導入駅を除く。
2 2020年からはE235系1000番台の導入が開始。
3 閉扉のみ非連携扱いになるモード。

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