JR東日本 山手線のホームドア:本格導入タイプ(2012~2016年度)
タイプ | 腰高式 | |
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メーカー | JR東日本メカトロニクス・ナブテスコ | |
開閉方式 | トランスポンダ式連携 | |
停止位置許容範囲 | ±350mm(TASCあり) | |
開口部幅 | 一般部 | 2,000mm |
1・11号車大開口部 | 2,900mm | |
10号車大開口部 | 2,640mm | |
非常脱出ドア | 戸袋開き戸式(片開き) | |
支障物検知センサ | 3Dセンサ |
JR東日本の山手線では、2010年度に恵比寿駅と目黒駅へ先行導入されたホームドアでの様々な検証結果を踏まえて、2012年度から本格的なホームドア導入が開始されました。先行導入駅で得られた知見や改善点をもとに、ホームドア本体の機能向上や駅ホーム改良工事の工法見直しによる工期短縮などが図られています。
本格導入の第1号は大崎駅の1・3番線で、2012年12月22日に稼働が開始されました。そして2016年度の品川駅を以て、大規模駅改良工事が予定されている5駅(東京駅・新宿駅・渋谷駅・新橋駅・浜松町駅)を除く22駅の整備が完了しました[1]当初は浜松町駅も2017年度末までに整備予定だったが、駅工事に伴い工事が延期された。。なお、大崎駅2・4番線と池袋駅5・8番線は主に始終着列車用ホームで使用頻度が低いため、ホームドア設置が見送られています[2]2031年度末までに整備予定。。
目次
1 ホームドアの仕様
1.1 基本構造
基本寸法は先行導入タイプと変わっておらず、開口幅は2,000mm、高さは1,300mmです。筐体のウグイス色の帯でホームの見分けが付くように、内回りホームは太線1本、外回りホームは細線2本とデザインが異なる点も引き継がれました。
一方、基礎部分(ベースプレート)の構造は見直され、先行導入タイプでは高さ方向と線路方向それぞれの位置調整プレートを備えた3層構造だったのに対して、本格導入タイプでは最下層プレートに高さ方向の調整機能を持たせることで2層構造となりました。これらの改良によって作業が簡略化・効率化されて工期の短縮につながったそうです。
筐体構造には大きな改良が加えられ、先行導入タイプでは非常脱出ドアがパネル2枚の両開き(観音開き)構造だったのに対し、本格導入タイプでは取り扱い性の向上や軽量化のためパネル1枚の片開き構造に変更されました。階段付近など十分なホーム幅員を確保できない箇所は、通常より幅が狭いタイプが使い分けられています。
また、先行導入タイプの3D支障物センサは床面スレスレの位置から見上げるような形で設置されていましたが、本格導入タイプでは高い位置に変更されています。
1.2 特殊開口部の改良
将来的な車両更新に伴うドア位置の違いや、京浜東北線が山手線の線路を使用する場合[3]田町駅~田端駅間ではトラブル時などに並行する京浜東北線が山手線の線路を使用する場合がある。を考慮して、両先頭車および10号車部分は開口幅やドアピッチが特殊になっています。先行導入タイプではこの部分の扉にガラス透過部はありませんでしたが、本格導入タイプからは透過部が設けられました。
ただし強度の関係か通常開口部よりは透過部の面積が小さく、この見た目はJR西日本のJR東西線北新地駅・大阪天満宮駅に設置されたホームドアと酷似しています。
先行導入タイプとの細かな違いとして、特殊開口に隣接する10号車3番ドアの扉長さが左右非対称になりました。これは筐体構造の改良に伴い戸袋スペースが小さくなったためだと思われます。
2 ホームドアの開閉方式
山手線のホームドア開閉方式は、トランスポンダ装置を用いた送受信により車両ドア側の開閉操作と連携するシステムです。列車が±350mmの停止許容範囲内に停止すると、1号車(外回り方先頭車)に搭載された「ホームドア車上子」と線路側に設けられた「ホームドア地上子」がピッタリ重なって情報の送受信が可能になります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
先行導入タイプと異なるのは、京浜東北線並行区間の外回りホームに10両編成向けの車掌用操作盤類が設けられていることです[4]内回りは10両と11両の最後部が同じ位置になるため操作盤も共通。。現在は京浜東北線のE233系1000番台にもホームドア対応改造が施されていますが、山手線のホームドア導入開始当時は未対応だったため、山手線の線路を走行する場合は駅員がホームドアの開閉操作を行っていたようです。
3 おわりに
山手線の特に西側(品川~新宿~田畑)の駅は古くから使われ続けている盛土式構造のホームが多く、ホームドア設置には大規模な改良工事が必要でした。当記事で紹介したホームドア本体の改良点に加え、ホーム補強用の横桁を新設するために必要な空間を、ホームドアに電力や制御信号を供給するケーブルルートに活用するなどの工夫で工期短縮・コストダウンが図られています。
2016年度から整備が始まった京浜東北・根岸線のホームドアは、さらなるコストダウンやメンテナンス性の向上を図るために基本構造が大幅に見直されました。以降、この京浜東北線仕様ホームドアがJR東日本における標準タイプとなり、山手線でも2019年度以降の設置駅からはこのタイプが採用されています。
出典・参考文献
- 山手線ホームドア 2013年度までの完成予定駅について:JR東日本
- 島津 優、岩崎 幸太、浜走 幸育「山手線ホームドア整備の現状」『JREA』Vol.55-No.4、日本鉄道技術協会、2012年、p36757-36760
- 狩屋 守「山手線ホームドア新設工事」『第31回 総合技術講演会 概要集』2016.10、日本鉄道施設協会、p13-16