JR東日本 八高線電車のホームドア対応改造は何のため?

2020年度から開始されたJR八高線・川越線の209系・E231系に対するワンマン運転対応改造では、同時にホームドア対応改造も行われています。しかし、拝島駅で試行運用されていた昇降バー式ホーム柵は2021年10月末に撤去されてしまいました。使い道が不明なホームドア改造の理由を考察します。
目次
1 拝島駅の昇降バー式ホーム柵について
2015年3月28日、JR東日本が今後のさらなるホームドア整備拡大を目指すための検証として、拝島駅の八高線上りホーム5番線に「昇降バー式ホーム柵」が試行導入されます。この時に車両側の改造は行われていないため、ホームドアの開動作は定位置停止検知による自動制御、閉動作は車掌による手動操作での運用となりました。
しかし、同駅のホーム柵は2021年10月26日を以て撤去されてしまいました。名目上は試行期間の終了とされていますが、不具合の多発や部品調達が難しいことなども理由だったようです。
ホーム柵の詳細については別記事をご覧ください。
2 ワンマン運転・ホームドア対応改造の開始

現時点でまだ正式な発表はありませんが、八高線・川越線(八王子駅~高麗川駅~川越駅[1]一部列車は南古谷駅まで乗り入れ。)では2022年春を目途にワンマン運転開始が計画されているため、同区間で運用される川越車両センター所属の209系3500番台・E231系3000番台には2020年度からワンマン運転対応改造が順次行われています。
これと同時に搭載されたのが無線式ホームドア連携システムの機器です。無線式連携システムは今後のJR東日本在来線の標準となるホームドア開閉方式で、総武線快速の新小岩駅や相鉄・JR直通線の羽沢横浜国大駅[2]JR側の発着時のみ。などで採用実績があります。ただし、八高線電車に搭載されたシステムは新小岩駅などと異なり、RFIDタグを用いて車両とホームドアのペアリングを行う新方式となりました。
3 主な改造内容


乗務員室内には無線連携システムの各種機器が設置された一方で、TASC(定位置停止装置)は搭載されていないため、床下機器の大きな改造は無かったものと思われます。ワンマン関連機器を除けば、改造内容や機器の配置は成田空港乗り入れ用にホームドア対応化された房総エリア用209系と概ね同一です。
前述の通り、従来の無線連携システム搭載車と異なるのが車両側面床下に設置されたRFIDタグです。これは隣接するホーム同士で混信を防ぐための工夫で、新小岩駅などは基本情報をやり取りするUHF帯無線とは別に伝搬距離が狭いLF帯無線を併用する方式でしたが、これをRFIDタグから車両の固有情報を読み取る方式に変更することで低コスト化が図られました[3]成田空港駅・空港第2ビル駅はどちらでもない特殊方式。。
4 車両改造は何のため?
拝島駅ホーム柵の最終日となった2021年10月26日、奇遇にも同日に八高線電車のワンマン運転・ホームドア対応改造が全編成で完了しました[4]余剰となる見込みの209系3100番台2本を除く。。この改造の目的は拝島駅ホーム柵のためではなかったのでしょうか?
そもそも、6年以上も継続されていたホーム柵の運用が唐突に終わるのは少し不自然にも思えます。そこで考えられるのは、ワンマン化後もホーム柵を継続運用する予定で車両改造を始めたものの、諸問題で急遽ホーム柵の撤去が決まった可能性です。一般的なホームドアより視認性が悪い昇降式ホーム柵はワンマン運転実施の支障になったのかもしれません。
ただし、拝島駅の八高線ホームには将来的にスマートホームドアが整備される見込みであることが明らかとなっています[5]拝島駅ホーム柵撤去を最初に報じた林まい子昭島市議議員の公式サイトより。。また、川越線のうち川越駅~大宮駅は2032年度末までの東京圏ホームドア整備路線に含まれているため、川越駅・南古谷駅まで乗り入れる八高線電車にも関係してきます。よって今回のホームドア改造がこれらの駅用だった可能性もゼロではないのが難しい部分です。
5 おわりに
ちなみに、今後はRFIDタグを使用する新方式が標準仕様となるため、同じくホームドア対応改造が進む中央線快速や南武線のE233系などにもRFIDタグが設置されています。 そんな主要路線の車両たちと並行して改造が行われた八高線電車が実際にホームドア連携機能を使う日はいつになるのでしょうか。
出典・参考文献
- 交通機関改善対策特別委員会:八高線拝島駅昇降式ホーム柵撤去 | 林まい子
- 東京圏におけるホームドア整備推進について:JR東日本
- ハエ41編成に中編成ワンマン対応改造 | 4号車の5号車寄り
- ハエ53編成OM出場 | 4号車の5号車寄り
- 根本 卓、千葉 正志、布施 毅、横山 啓之、笠井 貴之、山上 正規「総武快速線新小岩駅ホームドア連携システム導入に向けた開発と今後の展開」『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』Vol.56、日本鉄道サイバネティクス協議会、2019年