東急電鉄 東横線のホームドア:標準タイプ(渋谷駅以外)
タイプ | 腰高式 |
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メーカー | 三菱電機 |
開閉方式 | トランスポンダ式連携 |
停止位置許容範囲 | ±450mm(TASCあり) |
開口部幅 | 2,480mm |
非常脱出ドア | 開き戸式(一部の車両連結部) |
支障物検知センサ | 3Dセンサ(初期設置駅は2Dセンサ) |
東急東横線では、2013年3月16日の渋谷駅地下化・東京メトロ副都心線との直通運転開始と引き換えに、その前日をもって東京メトロ日比谷線との直通運転が中止されました。これにより日比谷線直通用の18m3ドア車が撤退、すべての列車が20m4ドア車に統一されたことでホームドアの設置が容易になりました。
こうして、地下化当初からホームドアが設置済みの渋谷駅以外では、同年12月23日に稼働開始された中目黒駅1番線を皮切りに整備が始まりました。そして約6年後の2020年2月23日、白楽駅での稼働開始をもって全21駅への整備が完了しています。
目次
1 ホームドアの仕様
1.1 基本仕様
渋谷駅地下ホームには、2008年に副都心線の駅として開業した当初から[1]ただし当初から東急が駅を管轄している。副都心線の他駅と同じ京三製作所製ホームドアが設置されていますが、それに対して東横線内の各駅では三菱電機製が採用されました。
副都心線仕様との最も分かりやすい違いは扉部分に透過ガラスが設けられた点です。筐体部分の色はややアイボリーががっていて、東横線のラインカラーである赤色の帯が施されています。
また、田園調布駅~日吉駅間で東横線と並行する目黒線は、2000年の開業当初[2]武蔵小杉駅~日吉駅間は2008年延伸開業。から京三製作所製ホームドアが設置されています。扉透過部の有無やカラーリング[3]目黒線は1駅ごとに色が異なるなど外観の違いは様々で、それにより一目でホームを見分けることができます。
副都心線は開業当初からATO(自動列車運転装置)による自動運転ですが、東横線は目黒線と同じく駅停車ブレーキングのみを自動化するTASC(定位置停止支援装置)が導入されました。ホームドア開口幅は目黒線が2,000mmだったのに対して、東横線は副都心線と共通の2,480mmです。この値はTASC停止精度±450mmおよび車種によってドア位置が多少異なることを考慮しています[4]目黒線はTASC停止精度±350mmで、車種によるドア位置の違いがほとんど無い。。
開口幅を広げたことで戸袋スペースが限られるため、車両ドア間の筐体は左右の扉を互い違いに収める戸袋一体型です。車両連結部の筐体は戸袋分離型で、戸袋スペースがさらに少ないことから左右の扉長さが非対称になっています。一部の連結部には非常脱出ドアが設けられました(詳しくは後述)。
開口部両側に貼られている黄色と赤色のテープは車両ドアとの重なりを許容している範囲です。この余裕代は副都心線内のホームドアにも設けられていて、詳しい理由が『副都心線建設史』に記載されていました。
停止精度の最終目標は、この申し合わせ事項で±450mm以内としているが、調整に要する期間や、可動式ホーム柵システム全体としての安定運行を考慮して、余裕代100mm(ホーム柵戸袋部と車両ドア開口部の重なり)を付可し、当面の停止精度を±550mm以内とした。
『副都心線建設史』p829より(第2章 車両 第5節 開業前ATO試運転)
各駅停車のみの停車駅は8両編成のみ[5]ホームは緊急用に10両分確保されているがホームドアは8両分のみ。、急行などの停車駅は8両・10両編成の停車に対応しており、編成の前部・後部となる箇所には乗務員用の扉が設けられています。この部分は筐体を斜めに配置することで出入りスペースを確保しています。
1.2 初期設置駅の違い
導入初年度の2013年度に設置された中目黒駅・学芸大学駅のみ、他の駅と少し異なる部分が見られます。2014年度以降は主に安全対策の面で改良が加えられました。
(1)非常脱出ドアの数
2013年度設置駅は非常脱出ドアが1ホームにつき1か所(ホーム中央の5-6号車連結部)のみでしたが、2014年度以降は全部で5か所に増やされました(どちらも乗務員用扉を除いて計上した場合の数)。
(2)支障物センサの3D化
技術情報誌によると、2013年度設置駅の支障物検知センサは「3平面センサ」すなわち2Dセンサを縦に3基並べてホームドアと車両の間を平面的に測定しているようです。これが2014年度以降は3Dセンサに変更され、立体的に測定できるようになったことで安全性がさらに向上しています。
1.3 設置駅ごとの特別仕様
(1)武蔵小杉駅のデジタルサイネージ
2016年6月より、武蔵小杉駅ホームドアの一部にデジタルサイネージが取り付けられました。これはAGC旭硝子が開発したガラス一体型デジタルサイネージ「infoverre(インフォベール)」というもので、当初は1年間の実証実験としてスタートしましたが、現在も引き続き運用されています。
場所は4番線(渋谷方面)の6号車2番ドア両サイドの戸袋部分です。左側には綱島駅→当駅間の列車走行位置[6]日吉駅から並行する目黒線も含む。や中目黒駅・渋谷駅までの平均所要時間など、右側にはプロモーション映像(異常時は列車運行情報)が表示されます。
(2)横浜駅
横浜高速鉄道みなとみらい線との境界駅である横浜駅1番線(みなとみらい線方面)のホームドアは、みなとみらい線のラインカラーである紺色に色分けされています。また、両ホームともにベースの色がアイボリーではなく純粋なホワイトのように見えるのは気のせいでしょうか?
ちなみに、みなとみらい線の横浜駅以外の5駅には2017年度から2021年度にかけて京三製作所製のホームドアが整備されました。
2 ホームドアの開閉方式
2.1 概要
ホームドア開閉方式は目黒線や副都心線と同じく、トランスポンダ装置を用いた情報伝送によって車両ドアと同期するシステムです。列車が許容範囲内に停止すると、線路側の地上子と1号車(上り方先頭車)に搭載された車上子がピッタリ重なって開閉連携が可能になります。
2017年3月から運転が開始された座席指定列車「S-TRAIN」は各号車1箇所のみのドアを開扉しますが、車両側からの情報によってホームドア側も当該ドアのみが開きます。一方で、2023年8月から平日夜の下り急行列車の3号車に設定された有料座席指定サービス「Qシート」は、2023年末時点だと車両ドア・ホームドアともにすべての箇所が開きます[7]代わりに各号車1か所の乗降口以外は車内に取り付けたネットで封鎖する。[8]大井町線でのQシート運行時は車両ドア・ホームドアともに1か所のみが開く。。
なお、目黒線とは歴史的な経緯によって地上子・車上子の位置関係が僅かに違うため、両車が同じ線路上を走るとTASC運転やホームドア開閉連携に支障があると思われます。東横線と目黒線が合流して乗り入れる東急新横浜線(2023年3月18日開業)ではどのようにしてこの問題を解決するのか、詳しくは別記事で解説しています。
2.2 車掌用表示灯(DS表示灯)
当初からワンマン運転を行っていた目黒線と異なり、現在の東横線は車掌がドア開閉を行っているため、2011年度にホームドアが設置された大井町線大井町駅と同じく車掌用の表示灯が設けられました。
この表示灯は「DS表示灯」と呼ばれていて[9]東京メトロも同じ呼び方。、東横線の車掌は「DSよし」と視差歓呼していました。なお、渋谷駅にはホームと車両の隙間を縮小する「可動ステップ」が設置されており、ステップ展開中は上段に「S」と表示されます。
3 ワンマン化に伴う変化?
2023年3月18日の東急新横浜線開業と同時に、東横線でもワンマン運転が開始されました。これに関連してかは不明ですが、2022年末ごろから筐体上部にある表示灯の点灯条件が変更されています(渋谷駅も含む)。
以前は異常発生時のみ点灯していたようですが、現在は旅客の乗り降りを検知して点滅するようになりました。具体的には、各開口部の支障物センサが旅客を検知すると当該開口部の表示灯のみが点滅していて、以前から似た仕様だった田園都市線・大井町線のホームドア表示灯とも挙動が少し異なります。
4 おわりに
冒頭で述べた通り、2013年12月から2020年3月までの約6年間で全21駅への整備が完了しました。みなとみらい線でも2021年度に全駅整備が完了したことから、副都心線~東横線~みなとみらい線は全駅にホームドア完備されています。
2023年3月に開業した東急新横浜線の新横浜駅・新綱島駅にも当初からホームドアが設置されました。しかしそのタイプは東横線・目黒線のどちらでもない独特な形態となっています。
出典・参考文献
- 東急東横線の中目黒駅にホームドアを設置します|東急電鉄
- デジタルサイネージ一体型のマルチメディアホームドアを共同開発|東急電鉄
- 副都心線建設史 | メトロアーカイブアルバム
- 木暮 隆雄、高岡 公浩「東急電鉄のホームドア設置計画」『JREA』Vol.58-No.11、日本鉄道技術協会、2015年、p39948-37952
- 齋藤 章、村上 浩至「東急電鉄におけるホーム安全対策」『鉄道と電気技術』Vol.27-No.7、日本鉄道電気技術協会、2016年、p34-38