JR西日本のホームドア:4ドア車用1次タイプ(北新地駅・大阪天満宮駅)
JR東西線の北新地駅では、2011年3月27日にJR西日本の在来線としては初の可動式ホーム柵(以下:ホームドア)が稼働開始されました。同線はホームドア設置を前に乗り入れ車両を20m4ドア車に統一したこと、雨の影響を受けない地下駅のためTASC(定位置停止装置)無しでも一定の停止精度を確保可能だったことが最初の設置駅に選ばれた理由でした。翌年度には隣の大阪天満宮駅でも同型のホームドアが設置されています。
目次
1 ホームドアの概要
タイプ | 腰高式 | |
---|---|---|
メーカー | JR西日本テクシア・ナブテスコ | |
開閉方式 | 開扉 | 自動(定位置停止検知) |
閉扉 | 車掌手動操作 | |
停止位置 | ±750mm(TASCなし) | |
開口部幅 | 一般部 | 2,800mm |
最後部 | 2,600mm | |
寸法 | 筐体 | 高さ1,300mm×厚さ190mm |
扉 | 高さ1,200mm | |
非常脱出口 | なし | |
安全装置 | 居残り検知 | 光電センサ・3Dセンサ |

ホームドアのタイプは20m4ドア車の207系・321系に合わせた構造の腰高式です。設計・開発はJR西日本および子会社のJR西日本テクシアと、既に国内外で多くのホームドア納入実績を持っていたナブテスコが共同で行ったようです。同じくナブテスコが開発に携わったJR東日本山手線のホームドアと外観の類似点が多くみられますが、筐体は扉を互い違いに収納する構造のため山手線ホームドアよりも厚みがあります。
かつては20m3ドア車の223系も「直通快速」としてJR東西線に乗り入れていましたが、ホームドア導入の支障になることから2011年3月のダイヤ改正で乗り入れ運用から撤退しました。なお、大規模なホーム補強は不要だった北新地駅の場合でも、設置に掛かった総工事費は約3.5億円だったそうです。
列車の停止精度を向上させるための「TASC(定位置停止装置)」を車両側に搭載するには莫大な費用・時間が必要になります。そこで、開口幅を当時としては広めの2,800mmとすることで、停止許容範囲は比較的余裕のある±750mmが確保されました。
ただし、編成最後部のみ開口幅が200mm狭い2,500mmとなっており、これは車掌がホームドア開扉操作を行う際に乗務員室から操作盤に直接手が届くように考慮されたためだと思われます。その後は列車検知システムによって開扉が自動化されたため、この最初期タイプだけに見られる特徴となりました。

居残り検知センサには3Dセンサと2点の光電センサが併用されていますが、3Dセンサに不具合等が生じた際に光電センサがバックアップとして機能する仕組みだそうです。緊急時用の非常開ボタンは開口部の両側に設けられています。
2 ホームドアの開閉方式
2021年末時点のホームドア開閉方式は以下の通りです。
- 開扉:自動(定位置停止検知)
- 閉扉:車掌手動操作
ホームドアと車両ドアの開閉を同期するための通信装置もTASCと同様に搭載されていないため、当初は開閉ともに車掌が手動操作していました。のちに列車の定位置停止検知でホームドアが自動的に開扉するシステムへと改修され、これが現在に至るまでJR西日本の標準的なホームドア開閉方式となっています。
列車がホームに入線すると、停止位置前方に設けられた測域センサ(2D-LiDAR)が車両前面を測定することで列車が定位置範囲内に停止したかを検知します。これにより列車在線時以外の誤操作を防止し、現在はこの判定結果に基づきホームドアを自動開扉しています。
車掌用開閉操作盤には光電センサ式が採用されており、「ホーム柵 閉」「ホーム柵 開」と書かれている部分に手をかざすだけで開閉操作ができます。このタイプのメリットは停止位置が多少ずれても操作がしやすいという点ですが、それでも最大のずれ量では手が届かなくなってしまうため、前述のように編成最後部のみ開口幅を狭めて操作盤を近づけているのだと思われます。
3 おわりに
2015年度には京橋駅1・2番のりばに仕様が一部変更されたホームドアが設置され、その後もドア位置が異なる車種への対応やコスト削減などを実現するために、昇降式ホーム柵をはじめ様々なタイプのホームドアが普及していくことになります。当時は前例が少なかった車両側を改造しない方式のホームドア運用も、現在は全国さまざまな事業者で採用されており、両駅はその礎を築いたとも言えます。
出典・参考文献
- 「第3回 ホームドアの整備促進等に関する検討会」の結果について – 国土交通省
- 井上 正文「JR東西線北新地駅における可動式ホーム柵の整備」『Cybernetics : quarterly report』Vol.16-No.4、日本鉄道技術協会、2011年、p13-18